こんにちは、せらすです。
皆様はブルーベリーを購入するとき、どんなパラメータを意識しますか?
開花時期・収穫時期・実のサイズ・収量・育てやすさ
このあたりでしょうか。
しかし私はこれ以外にも露地植えブルーベリーを上手く育てるために必要なパラメータがあるのではないかとずっと思ってきました。
そして、ずっと研究していた事がある程度データが貯まり、確証を得ましたので提言させて頂こうと思います。
それはブルーベリーの「異種・異物寛容度」というパラメータです。
(私の知っている限り、このような論文もWebも見たことありません。たぶん日本初。他に同様の事をデータなどと一緒に紹介している論文やWebがあったら教えてください。「日本初」は撤回します。)
数字化するのは難しいパラメータなのですが、それは品種ごとに確実に存在し、露地植えの難易度を左右します。
この事を知っておけば露地植えブルーベリー栽培の管理が楽になるのではないでしょうか。
それでは説明してきます。
異種・異物寛容度とは
異種・異種寛容度:自分の生育テリトリーの中にどれだけ他の存在を許容できるかという値
ブルーベリー栽培をしていて、
- 葉と葉・枝と枝がぶつかったらその部分の成長が止まったり、枝が曲がってしまった事はありませんか?
- 露地植えのブルーベリーが掘った穴の中でしか成長していなかった事はありませんか?
- 雑草などに覆われたら弱ったり枯れてしまった事はありませんか?
- そしてこれは特定の品種だけ顕著な気がしませんか?
他のブルーベリーも同じように栽培しているのになんで?
と思う事がたくさんあると思います。
これらは全て、その品種の異種・異物寛容度が「低いから」という事で言い表せれると考えています。
なぜこのようなパラメータがあると思ったか
ポットではうまく育つ品種、露地植えならうまく育つ品種。
これらを決めているのはどういう要因なのでしょうか?
ずっと疑問に思っていた事です。
ポット栽培でうまく育たない理由は「団粒化された有機物の不足」や「根域不足」などが考えられます。
しかし、しっかり土壌改良した露地植えでブルーベリーがうまく育たなかったり、枯れたりする原因は謎のままです。
そして、露地植えでうまく育たない品種も「根域制限」すればうまく育つ事があります。
という事は
・露地だけに発生する外的要因があるのではないか?
・根域制限は根の成長を制限するだけでなく、外的要因から身を守る壁になっているのではないか?
・外的要因に耐性があるか無いかで栽培難易度が変わるのではないか?
・それを調べる事で、数値化は無理だとしても他の品種と比べて「高い」「低い」は言えるようになるのではないか?
以上の理由で調べようと思ったのです。
結論
最初に結論を述べておきます。
異種・異物寛容度は確実に存在し、各品種ごとに値は異なる。
この値によって自然界における生存競争に優位に立てるかが変わる。 この値が低いと雑草などの生存競争的に優位に立つものにおいて簡単に生育する場を奪われる。 このような品種を露地植えする場合、雑草などの異種・異物をいかに排除するかが栽培の重要点となる。 |
という事になります。
つまり露地植えする際は、「異種・異物寛容度」が高い品種を選ぶか
雑草などの生存競争的に強いものを排除していくか、という事がキモになります。
総じてノーザンハイブッシュ系は「異種・異物寛容度」が低いと言えます。
雑草に覆われたり、根が植え穴一杯に広がると成長が止まったり枯れたりします。
私が日ごろからノーザンハイブッシュの露地植えをおすすめしていないのはこのためです。
系統ごとに異種・異物寛容度を言えば
ラビットアイ>サザンハイブッシュ>ノーザンハイブッシュ
という事になるでしょう。
以下、「異種・異物寛容度」を紹介するに至った検証について書いています。
検証
ブルーベリー栽培において最も生育を阻む「異種・異物」といえば雑草になります。
雑草は日照をさえぎるだけでなく、水分・養分の競合を起こしたり、根域を狭めブルーベリーの生育を阻害します。
ですので検証のために約半年の間、草刈りせずに放置してみました。
検証を行った品種はSHサファイア・SHミレニア・SHエメラルド各10本ずつになります。
ご覧のように雑草が生い茂り、ブルーベリーを完全に覆っています。
もちろん観察・管理の為に「畝間・株間」は草刈りしています。
正面から見るとこのようになっています。
完全に雑草に覆われています。
ちなみに品種はSHサファイアです。
そして草刈りをしてみました。
シュートも出ており、枯れるような傾向は一切ありません。
今回は畝・品種単位で検証しているのですが、サファイアを植えてある畝10本とも、全て同じ状態でした。
そして特筆すべきは、全てのサファイアが同様の成長をしていた事。
手前から奥に並んでいる10本がサファイアなのですが
どの苗も生育度はほぼ同じ状態でした。
なにが特筆すべき事なのかと言いますと、
雑草はほぼランダムに生えてきますので、場所やブルーベリーの固体ごとに生育差がでるのが普通だと考えられます。
しかし、上記の結果だけを見れば「雑草に阻まれても、雑草が少ない有利な状態でもほぼ同じ生育をしている」という事になります。
これは「異種・異物寛容度」が高く生存競争において非常に有利だと言えます。
では他の品種はどうなのでしょう?
同じ状態で半年放置したSHミレニアです。
雑草を取り除いてみると数本枯れていました。
なんとミレニアの畝は、10本中3本が枯れてしまいました。
しかもミレニアの方は生育の差が著しいです。
左右とも同じ品種(ミレニア)、同じ栽培年、放置も含め、全て同様に管理していました。
しかしこれだけ生育の差が発生しています。
これは、ほぼランダムに生える雑草に影響を受けてしまい、
「ある固体は枯れ、ある固体は生育を阻まれ、たまたま雑草が少ない条件がいい固体だけ成長した」と言えると思います。
このような品種は生存競争において非常に不利です。
露地植えでのこのような品種の栽培は「除草」や「根域確保」など、管理の手間が増えると考えられます。
ではSHエメラルドも見てみましょう。
SHエメラルドは10本中1本枯れていました。
しかし生育にサファイア・ミレニアと異なる傾向がありました。
シュートが不自然に曲がっていますね。
こちらもです。
中央のシュートをよける形で不自然に伸びています。
これはどういう事なのでしょうか。
推察ですがエメラルドは上記2品種と同じ条件で1本しか枯れておらず
10本の中で、極端な生育の差は認められませんでした。
つまり「異種」の寛容度はそれほど低くないと考えられます。
しかし「異物」においては極端に嫌がり、同じ母体の枝でさえ避けてしまうのではないか?と考えています。
こちらについては別途検証が必要ですので、引き続き観察を続けたいと思います。
不思議に思う事
なぜこれらのパラメータが今まで重要視されてこなかったのでしょうか。
苗業者のカタログには当然このようなパラメータも書かれていませんし、ブルーベリーの本にも書かれていません。
しかし誰しもが声高に叫ぶ以下の項目
- ちゃんとした土壌改良
- バークチップを敷き詰める
これらは全て、雑草などの生存競争的優位に立つものから「根域を確保」するための手段なのだと考えられます。
そもそもブルーベリー品種の開発元では様々な植物との混生など意図してないでしょうし、その苗の版権を購入している苗業者さんも雑草の中での栽培は意図していないでしょう。
しかしエンドユーザーには間違いなく、「雑草が生えている畑で栽培」するシチュエーションはあるわけで、ここに生産・販売・ユーザーの意図のアンマッチが生まれ、このような状況になっているのだと思います。
もちろん雑草が無い方がいいのですが「露地植えする場合」や、前記事に書いたような「自然を意識する農法」では雑草との混生は避けられません。
ブルーベリーを育てるのは工場ではなく農場なのですから、雑草との混生や生存競争などの部分も意識しないと上手に栽培していくのは厳しいと考えています。
最後に
いかがでしたか?
今日はブルーベリーの露地植えの隠されたパラメータという事で「異種・異物寛容度」という事を紹介させていただきました。
実際のところ、私は単なる一個人でやっている農家なので、大学や専門機関のように研究できない部分もあります。
被検体や品種数が少ないなど、色々不完全な部分があるとは思いますが、それなりに推察と検証を重ねてこの記事を書いています。
是非ご意見・反論などもお寄せください。
それでは今日はこのへんで。
皆様の露地植えブルーベリー栽培がうまくいきますように!
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