せらす果樹園Q&A Vol.2 おすすめの農薬




こんにちは、せらすです。
今日も全力で質問に回答していきます。

質問

Q.開花時期に害虫が湧いています。薬品で良いものがあれば教えてください。

質問なんですが、花が咲くこの時期に、2cm位の黒い毛虫がいます、夜盗、青虫も見ます。葉が食害されるのですがどの様に防げば良いのでしょうか。薬品で良いものがあれば教えて頂ければと思います。よろしくお願いします。

(miさんより)

A.開花時期の農薬散布はNG。できるだけ捕殺駆除を心がけてください。

開花時期には受粉の為に害虫も含めて、たくさんの昆虫がやってきます。害虫だけに効く農薬があればいいのですが、まず害虫の同定(同定:なんていう昆虫か見定める事)をしなくてはなりません。しかし同定は簡単ではありません。似たような外見で色んな種類の害虫がいるからです。
そして害虫が同定できれば農薬を決めていくわけですが・・・。

話はそう簡単にはいきません。

訪花昆虫に対する配慮

冒頭にお話したとおり、この時期にはたくさんの昆虫がやってきます。その中にはブルーベリーの受粉を手助けする訪花昆虫もいるわけです。
例えば、マイマイガに薬効がある「サイアノックス水和剤」という農薬があります。害虫がマイマイガであれば使ってしまいたいところですが、注意書きのところを見てみると

● 蚕に対して影響があるので、周辺の桑葉にはかからないようにする。
● ミツバチに対して影響があるので、以下のことに注意する。
○ ミツバチの巣箱及びその周辺にかからないようにする。
○ 受粉促進を目的としてミツバチ等を放飼中の施設や果樹園等では使用をさける。
○ 関係機関(都道府県の農薬指導部局や地域の農業団体等)に対して、周辺で養蜂が行われているかを確認し、養蜂が行われている場合は、関係機関へ農薬使用に係る情報を提供し、ミツバチの危害防止に努める。

住友化学株式会社-サイアノックス水和剤 使用上の注意から抜粋

このように書かれています。

簡単に言うとブルーベリーの受粉を助けてくれるミツバチなどにも農薬が効いてしまうという事です。ご質問の内容では「開花時期での害虫の駆除はどうしたらいいですか?」と書かれていますので、訪花昆虫に影響のあるこのような農薬は使えません。

使用時期に対する配慮

また、使用時期に対する注意も必要です。「サイアノックス水和剤」のブルーベリーの使用時期は「収穫30日前まで」と記載されています。「開花時期での害虫の駆除」と一口にいってもブルーベリーの開花時期は品種によって1~2ヶ月は簡単に変わってしまいます。

簡単な例をあげれば、5月末まで咲いているREオンズローと、6月頭に収穫できるSEサファイアが同じ畑に植えてあれば、この農薬は使用することはできない、ということです。

農薬散布はミスト状態で散布しますからちょっとした風で隣の木の果実に付着してしまう、なんてことは日常茶飯事です。近隣にある植物にも気を使わないと農薬を使用することはできません。

登録農薬でないと使用できない

たとえ害虫を同定できたとして、薬効がある農薬があったとしても「登録農薬」として農林水産省に認可されていないと使用することはできません。これらは「農薬取締法」という法律で規定されています。
これらを列記していくと、とても長くなってしまうので詳細は割愛させて頂きますが、重要なポイントは取締りの対象は「農業従事者」ではなく「農薬使用者」となっています。つまり、ご家庭で農薬を使う場合も「農薬取締法」を守らなければならないという事です。

いくつか挙げさせて頂きますと、

  • 農作物に害を及ぼさないようにすること
  • 人畜に危険を及ぼさないようにすること
  • 土壌・水域を汚染・汚濁させないようにすること
  • 適用農作物の範囲に含まれない農薬を使用しないこと
  • 使用時期以外の時期に農薬を使用しないこと
  • 総使用回数を超えて使用しないこと
  • 希釈倍数の最低限度を下回らないこと(原液を多くして濃くするのはダメ)
  • 有効期限を過ぎた農薬を使用しないこと

※抜粋なので詳しく知りたい方は「農林水産省の農薬を使用する者が遵守すべき規準を定める省令」をご覧ください。

と、様々な規定があります。ホームセンターなどでお手軽に手に入る農薬ですが、使用するのは簡単ではない、という事を覚えておいてください。

環境への配慮

ブルーベリーを露地で栽培している限り、そこには自然のサイクルが存在しています。もちろん害虫もその一部です。もし様々な条件をクリアして農薬を使用し、害虫を駆除できたとしても自然のサイクルが循環しなくなってしまいます。

害虫といえどそれを捕食する動物・昆虫が必ず存在しています。もし害虫などのエサとなる生物がなくなってしまえば、食物連鎖の上位にいる生物は存在することができません。

自然のサイクルを寸断してしまえば、今後ずっと人の手が必要になってしまいます。そして簡単には回復しません。こういった事にも注意しておいてください。

予防するには

ブルーベリーの登録農薬で、長期に渡って害虫を予防する効果がある農薬はありません。どれも対処療法的な使用となります。では農薬を使わずどうやって害虫を予防すればよいのでしょうか?

せらす果樹園では害虫の天敵となる昆虫・生物が住みやすい環境を作る事を心がけています。

具体的には、

  • 除草剤などを使わず、ある程度の草地を残す
    (クモやカマキリ、ハチなど天敵の生息場所の確保)
  • 極力農薬を使わない
    (自然のサイクルを寸断しない)
  • 枝や葉が混まないように剪定する
    (害虫が寄り付きやすい場所を作らない)

と、いった内容です。幸いにもせらす果樹園では害虫が大量発生したことはありません。それもこれも自然に寄り添った栽培を心がけているからだと思っています。

まとめ

  • 気軽に農薬を使用するのはNG
  • 使用するときは周囲の環境への配慮と使用方法を遵守する
  • 害虫が寄り付きにくい環境づくりをしていくことが大事

最後に

せらす果樹園ではブルーベリーに関する栽培のご相談・ご質問を受け付けております。ブルーベリーに関するお悩みがあれば「お問い合わせ」←こちらにお寄せください。

それでは今日はこの辺で。
バイバイ!