こんばんは、せらすです。
園主は15年以上(だいぶ年をとってしまった(笑))ブルーベリーを栽培して、土作りに対する考え方がだいぶ変わってきました。今回はその内容について書いていきます。
過去の土壌に対する考え方
現在から過去にさかのぼって考えるとブルーベリー栽培における土壌というのはとりあえず「酸性」にする、という思想が根付いていました。
もちろん間違いではありません。ブルーベリー初心者に栽培のコツを一言で伝えるならば「酸性土壌で栽培する」と伝えるのが手っ取り早いです。
…ところが土壌を酸性にするだけでは上手く育たない事例が多く出ました。しかし多くの人は
- 気候や風土
- 栽培者のスキル
- 品種による特性
という言葉によって片付けていました。「酸性土壌にすれば育つはずなのに育たない。これは土壌以外に問題があるはずだ」と土壌以外に回答を求めました。
本当にそうなのでしょうか?
それだけでは片付けられない要素があるはずです。それらの理由があって、過去の私の記事では酸性土壌に追加して「通気性+根域の確保」を記事にしてきました。
ブルーベリー植え付け時の注意
これらも間違っているわけではありません。ただ「考える順序が逆になっている」のだと私は思います。その内容について考察していきます。
何が酸性土壌と通気性を好むのか
「ブルーベリーの樹が酸性土壌を求めている」というのは間違ってはいませんが、根拠ではありません。そもそも「何が酸性土壌を求めているのか」という事について考えると意外なものが見えてきます。
過去の記事で触れていますが
ブルーベリーとは?分類・歴史・特徴について説明します。
ブルーベリーの細根には、ツツジ型菌根菌(エリコイド菌根菌)などの菌類が共生しています。
ツツジ型菌根とは!
植物の根の皮層細胞から土壌へ菌糸の伸ばし、土壌の栄養素を植物へ提供している。
他の菌根に比べて高い有機物分解能力を持っており、未分解の有機物が堆積しているような強酸性土壌で最も活発になる。
一般的には強酸性土壌では、重金属の溶脱が多く植物の育成には適さないが、ツツジ型菌根は重金属イオンの吸収を抑制し、植物の重金属中毒を防止している。
これらの共生菌がブルーベリーの栄養吸収を助けています。また注釈にもあるように「未分解の有機物が堆積しているような強酸性土壌で最も活発になる。」となっています。
ブルーベリーの自然環境での生育や栄養獲得を考えるうえで、ツツジ型菌根菌は非常に重要な役割を担っているのです。
有機物の行方
ここで有機物がどのように分解され腐植化していくのか考えてみましょう。
①雑草や枯れ葉、その他有機物
これらの主な成分は
- 炭素(C)
- 水素(H)
- 酸素(O)
- 窒素(N)
- リン(P)
- カリウム(K)
- カルシウム(Ca)
- マグネシウム(Mg)
- 硫黄(S)
などです。ここでは微量元素は置いておいてC・H・O・Nについて考えていきます。
②微生物が活動を開始
細菌や糸状菌(カビ)が有機物を食べ始めます。この時、空気中の酸素(O₂)を使って呼吸します。簡単に書くと
有機物(C・H・O) + O₂
↓
CO₂ + H₂O + エネルギー(熱)
つまり
炭素(C)→ 二酸化炭素(CO₂)
水素(H)→ 水(H₂O)
になります。堆肥を作るときに有機物の山が熱くなるのは、ここで発生する熱エネルギーによるものです。この熱で堆肥の温度は50〜70℃まで上昇します。一般のブルーベリー栽培における土壌では堆積している量が少なく、このような温度変化は起きません。
③アンモニア態窒素への変化
雑草にはタンパク質も含まれています。タンパク質には
- 炭素(C)
- 水素(H)
- 酸素(O)
- 窒素(N)
が含まれています。分解されると
タンパク質
↓
アミノ酸
↓
アンモニア態窒素(NH₄⁺など)
有機態窒素は微生物によって無機化され、植物が利用できるアンモニウム(NH₄⁺)などへ変化していきます。また酸性土壌では硝化菌の活動が抑えられやすく、アンモニウム(NH₄⁺)から硝酸(NO₃⁻)への硝化が進みにくいため、アンモニウム態窒素が比較的残りやすくなります。
④植物が再び利用する
植物は根から
- 硝酸イオン(NO₃⁻)
- アンモニウム(NH₄⁺)
- リン酸イオン(PO₄³⁻)
- カリウムイオン(K⁺)
などを吸収します。そして光合成で
6CO₂ + 6H₂O+光
↓
C₆H₁₂O₆ + 6O₂
を行い、新しい葉や茎を作ります。つまり、空気中の二酸化炭素(CO₂)を取り込み、土中からN・P・K・その他微量元素などの栄養素を吸収して新しい葉や枝、根、果実などを作っていきます。
何に注目すべきか
これらの流れを説明させて頂いたのはブルーベリーの生育について「土壌の菌類」が大きく影響しているという事です。
「酸性土壌にする・バークチップを敷く・通気性を確保する」。これらはブルーベリー本体だけでなく、菌類や微生物にとっても活動しやすい環境につながります。
- 酸性土壌→ツツジ型菌根の活動が活発になる
- バークチップを敷く→有機物を分解する菌類・微生物の活動場所を作る
- 通気性の良い土壌→菌類・微生物の活動に酸素が必要
つまり、私が現在考えているブルーベリーの土作りとは、単に「土を酸性にする」ことではなく、ブルーベリーの根と、それを取り巻く菌根菌や微生物が活動しやすい環境を作ることです。
酸性土壌、豊富な有機物、適度な水分、通気性。これらが組み合わさることで、ブルーベリーの根と土壌生物が機能しやすい環境になる、と考えています。
C/N比について
初めて聞く人もいるかもしれませんが、土壌有機物の「炭素(C)/窒素(N)の質量比」になります。
以前の記事、
2026 礼肥について考える
でも少しだけ触れていますが、
一見、栽培2年目でこの量は多すぎるように見えますが、有機物マルチを厚めに敷いてます。
C/N比(炭素比)を考慮すればこのくらいで適量、もしくは少ない方でしょう。
有機物を分解するとき、菌類や微生物は炭素だけでなく窒素も使います。
このとき、C/N比が高い有機物ほど分解に多くの窒素を必要とするため、条件によっては土壌中の窒素が微生物に一時的に取り込まれ、植物が利用できる窒素が不足することがあります。これがいわゆる「窒素飢餓」です。
とりわけ針葉樹のバークチップは、C/N比が非常に高い資材です。
| 有機物 | C/N比 |
| 稲わら | 60 |
| もみ殻 | 75 |
| 広葉樹 落ち葉 | 50-120 |
| 針葉樹 落ち葉 | 20-60 |
| おがくず | 134-1064 |
| 剪定枝 | 70 |
| 雑草 | 50 |
| ピートモス | 52 |
| 樹皮(バーク) | 100-1300 |
※Wikipedia C/N比より抜粋
ただし、バークを土の中に混ぜ込む場合と、地表面にマルチとして敷く場合では影響が異なります。
私の園ではバークを地表面に敷いているため、微生物の活動は主に表層付近に集中します。一方、ブルーベリーの根はその下の土壌にも広がっているので、強い窒素競合は起きにくいように感じています。
これはあくまで私の圃場での経験ですが、基準施肥量より2割ほど多めに施肥することで、ブルーベリーの生育と有機物の分解のどちらにも大きな問題は出ていません。
まとめ
いかがだったでしょうか?
私も以前は、ブルーベリーの土作りではpHそのものに重きを置いていました。しかし15年以上栽培を続け、根の状態や有機物の分解、生育の違いを見ていく中で、今では「ブルーベリーの根と、それを取り巻く菌類・微生物が活動しやすい環境を作る」という考えに変わりました。
ブルーベリーの自然環境での生育や栄養獲得を考えるうえで、C/N比や共生菌は非常に重要な役割を担っています。
ちなみにC/N比や共生菌などの話は2000年代からありました。しかしブルーベリーの栽培において共生菌やC/N比までまとまった情報があまり存在せず、あったとしても断片的な情報しかありませんでした。
現在でも「ブルーベリー 植え方」などで検索すると「ピートモスで酸性土壌」がキーワードになっています。それは間違いではありません。しかし植物(ブルーベリー)の栽培において何が必要なのか?を一つずつ紐解いていくと、より自然に寄り添い、理にかなった栽培ができるのではないかと思います。
今日はここまでです。
それでは良きブルーベリーライフを。バイバイ!























コメントを残す