こんにちは、せらすです。
前回のサザンハイブッシュ編に引き続き今回はノーザンハイブッシュ編の2017年度レポートをしてみたいと思います。
せらす果樹園での出荷用ノーザンハイブッシュは
- チャンドラー
- オザークブルー
の2品種だけです。
少ないように思えますが、広島県沿岸部において出荷用に安定して果実を生産できるノーザンハイブッシュは多くありません。やはりノーザンハイブッシュは寒冷地向けで用土を選ぶ品種群なのでしょう。
上記2品種でさえ、営利目的であればおすすめしにくい品種です。
ただ、2品種だけではちょっと寂しいのでかろうじて営利栽培できそうな品種もレポートしておきます。
(せらす果樹園ではリストラしてますが)
広島県沿岸部で露地植え・営利栽培で絞ったらこうなった。
チャンドラー
サイズ :★★★★★
味 :★★★
食感 :★★★★
収量 :★★★
輸送性 :★★
樹勢 :★★★
総合評価:★★★
2016年度の収穫は6/18~
2017年度の収穫は6/24~
シーズン最初は30mm前後の大玉が取れます。
(参考:せらす果樹園通信 Vol.21 チャンドラーの出来を楽しむ)
味も酸味が程よく、種や皮など食感も問題ありません。食べ応えもあって個人的には好きな品種です。
しかしシーズン最初の大玉はせらす果樹園ではほとんどの場合、数量が揃わず規格外での出荷になってしまいます。チャンドラーが活躍するのは中盤の収穫からです。XL~3L程度の果実がシーズン後半まで安定して収穫できます。収穫時期は梅雨の後半にかかってしまいますが、サザンハイブッシュとラビットアイをつなぐ品種として貴重な存在です。比較的、裂果耐性はあるようです。
樹勢はノーザンハイブッシュとしては、丈夫な品種といえます。夏場でもゆっくりですが、新梢を出して成長していきます。とはいえ、ラビットアイやサザンハイブッシュに比べると 新梢の発生は少なめで、剪定の自由度が低く思い通りに仕立てられない事も多いです。
総じてリスクが多い品種ではありますが、当園で最大果がなること、園主の個人的な趣味、という事で栽培を続けています。
問題点としては、なぜかマメコガネの食害がよく発生します。マメコガネの発生条件については詳細には検証していないのですが
- 皮が薄い
- 果肉が柔らかい
- 糖度が高い
- 香りが強い
- 極早生~梅雨までの収穫できる品種
こういった品種にはよく発生するように思います。
他にも選果が難しい(XL規格以上の選果器がない)、完熟果は果肉が柔らかく、選果や輸送時に気を使うなどの問題もあります。
大きな実がなる魅力的な品種ですが、摘み取り園ならともかく生果出荷という観点では積極的にお勧めできない品種です。
オザークブルー
サイズ :★★★★
味 :★★★★★
食感 :★★★★
収量 :★★
輸送性 :★★★
樹勢 :★
総合評価:★★
2016年度の収穫は6/23~
2017年度の収穫は7/2~
シーズン最初は24mm程度の大玉が収穫できます。味も食感も個人的にはブルーベリーに中でもトップクラスと思っています。完熟のオザークブルーは甘酸のバランスよく、大玉で本当においしいです。果柄痕も小さく、果肉は締まっており選果・輸送作業も問題ありません。
ではなぜ評価が低いのか?それはやはり栽培が難しく手間がかかるという事です。
①生育不良に陥りやすい
他の品種と同じように管理していてもだんだんと弱っていき毎年数本ずつ枯れていく状況です。
成長自体は旺盛なようで、新梢も根も良く伸びるようです。ハイブッシュ系にしては珍しく、たくさんサッカーを出す品種です。
推測ですが、オザークブルーはサッカーをよく出すことから非常に浅根(通気性のいい表層部にしか根が張れない)ではないかと思っています。浅根ということで夏場の地温上昇にとても敏感で夏場の生育不良の原因になっているような気がしています。
上手に育てようとするならば根域確保&地温維持のために毎年バークを追加する必要があると思います。
そこまで手間とコストをかけるほどの品種かどうか。
②収穫時期や収量にメリットがない
オザークブルーの収穫時期にはレガシー・チャンドラー・オースチンと言った品種も収穫できるため、オザークブルーに収穫時期における優位性はありません。
また収量も少なめで、同時期に収穫できるいずれの品種にも見劣りするため、露地植え・営利栽培目線で言えば、無理して栽培する理由が見当たりません(梅雨後に収穫できるノーザンハイブッシュという点ではメリットはあります)。
③枝が柔らかく結果枝が曲がる
枝が柔らかいのか、結果枝が重みで曲がります。サファイアやニューハノーバーでも似たような傾向がありますが
オザークブルーが一番曲がりますね。しかも結構太いところから曲がります(折れるわけではありません)。
思い通りに仕立てようとしたら支柱を立てる必要があります。
と、まぁこのようにデメリットが多い品種です。個人の趣味で栽培するなら問題ないのですけどね。せらす果樹園ではリストラ候補に指定しています(数本は残すかもしれませんが・・・)。
ちなみに・・・。
私は大関ナーセリーさんで購入しましたが現在は取り扱っていないようです。現在は有限在社アルビックさんで取り扱っておられるようです。SHスターもこちらで購入できます。
※最低5本以上の購入となります。
以下、リストラしたけど地域や用途によっては使えそうな品種
ブリジッタ
サイズ :★★★
味 :★★★★
食感 :★★★
収量 :★★
輸送性 :★★★
樹勢 :★
総合評価:★★
オザークブルーをそのままスケールダウンしたような品種です。3年目ぐらいまではよく育つのですが、成木時から木が弱りはじめました。土壌のピートモスが土に還ると生育が悪くなるようです(未検証)。土壌成分を一定にできる液肥栽培などでは活きるのかもしれません。
果実はシーズン最初はギリギリ大玉、以降は中玉ばかりになります。味は酸味系で嫌いではありませんが、完熟果では果肉は柔らかめです。
こういう言い方はあまり好きではありませんが旧世代の一般的なハイブッシュブルーベリー、という感じです。
昨今の品種は、
- 大玉
- 果肉は固め
- パリッとした食感
- 輸送性・貯蔵性に優れている
- 生育が良い
- 早生品種
が流行になっているので、そのような観点でみれば若干古臭さを感じてしまうのかもしれません。10年前ならともかく、今から植えようとするのであれば別品種をお勧めします。
エリザベス
サイズ :★★
味 :★★★
食感 :★★★
収量 :★★
輸送性 :★★★
樹勢 :★★★
総合評価:★★
実のサイズはブリジッタと同等です。シーズン最初はギリギリ大玉、その後は中玉ばかりになります。
風味は極上、とよく聞きますが広島県では梅雨と収穫時期が重なるため本来の実力を発揮できないようです。
完熟果は柔らかめ。ですので選果・出荷にも気を使います。
樹勢はハイブッシュにしては暑さに耐性があるようです。枯れない、という事だけでも賞賛に値しますw
ノーザンハイブッシュの中ではトップクラスです。
広島県沿岸部で
「露地植え・バークチップ無し」で栽培できるノーザンハイブッシュはチャンドラー・エリザベス・ブルーレカぐらいだと思っています。次点でブリジッタ・レイトブルー・オザークブルーでしょうか。
営利栽培ですので一定の栽培方法で枯れてしまう品種はお話になりません(特別扱いはできないのです)。
味は嫌いではないですが生果出荷には向かない品種ということでリストラ対象となりました。
現在は受粉木として1本だけ残してあります。
ブルーレカ
サイズ :★
味 :★★★★
食感 :★★★
収量 :★★★
輸送性 :★★★
樹勢 :★★★★
総合評価:★★
ニュージーランドで育成開発された品種として有名ですね。甘酸のバランス良く、風味も食感も悪くはありません。
収量も多く、樹勢にも優れ広島沿岸部においても旺盛な生育を見せます。
ですがなぜリストラ対象なのかと言いますと・・・。
せらす果樹園の栽培品種の中で実のサイズがダントツに小さいのです。剪定を色々工夫してみても、なかなかLサイズにはなりません。シーズン前半はMサイズ、後半はSサイズになっていきます。
せらす果樹園ではSサイズは全て規格外として販売していますのでブルーレカは営利栽培品種としては成り立たないのです。
また収穫時期が梅雨と重なるのでどうしても果実品質が落ちてしまいます。裂果耐性はあるようですが、本来の味を出すためには運の要素が多くなってきます。さらに小粒で多収なために収穫が大変です。
以上の理由から生果出荷の営利栽培ではあまりおすすめできません。
摘み取り園や加工用途には向くかもしれません。
レイトブルー
サイズ :★★
味 :★★★
食感 :★★★
収量 :★★
輸送性 :★★★
樹勢 :★★
総合評価:★★
寒い地域では割と評判が良かったので数本導入してみました。しかし、やはり広島県沿岸部の気候には合わないようです。枯れるほどではありませんが夏場の生育は不調です。果実品質も特筆すべき点はありません。
栽培に同じ手間をかけるならもっといい品種があると思います。ですが、オザークブルーと同じくレイトブルーはノーザンハイブッシュにおける極晩生品種です。よって、梅雨後にノーザンハイブッシュの収穫をしたい、という事であれば
この品種にも活躍の場があるかもしれません。
せらす果樹園では梅雨後にはすぐにベッキブルーやオースチンなどのラビットアイ品種が収穫できるので、ノーザンハイブッシュの極晩生にあまり必要性を感じていません。
試験栽培するとやっぱりダメだったー!ってのが多くなっちゃう。
それでは今日はこの辺で。
バイバイ!