こんにちは、せらすです。
そろそろブルーベリーに肥料を与える時期になってきました。ですが、ブルーベリーの肥料、どのように与えていいか迷っている方はいませんか?
私もブルーベリーを栽培し始めた頃は色んな肥料に手を出しました。失敗もありましたし、成功もありました。
その結果、今の施肥体系に落ち着いたわけですが・・・。
今日はブルーベリーの肥料の与え方について書いていこうと思います。
目次
せらす果樹園の肥料
せらす果樹園で使っている肥料はコチラです。
コメリの園芸資材で売られているダイナミックス10(ちなみに以前はアミノゴールドという名前で売られていました)。この肥料を開園からずっと使っています。施肥時期は3月頭に1回。基本は1本の成木に60グラム。
樹の状態や、品種ごとに若干分量を変えています。
施肥体系は農家さんによっては秘密にしておられる所もあります。しかしせらす果樹園では隠す事はしません。なぜなら施肥において、肥料の種類・分量・回数などは農園や品種、栽培環境によってまちまちで、決まっているものではないと考えているからです。
ではなぜこの肥料を使っているのか?
「手に入れやすく使いやすい」からです。
その肥料は本当に必要なのか
入門書には「1年目は何グラム、2年目は何グラム」とか肥料袋のウラにもそのような事が書かれています。もちろん、何の根拠もなく書かれているわけではないのですが・・・。
しかしよく考えてみてください。「自然界に存在する植物が肥料がないと育たない。」そんな事があるでしょうか?ブルーベリーだって自然界に存在する植物です。「肥料がないと育たない」なんて事はありません。
例えばチッソ成分は自然の土壌中に0.1~0.6%ほど存在すると言われています。それは食物連鎖や自然環境のサイクルの中で常に供給され、消費されているのです。つまり、露地で栽培している限りチッソが欠乏するなんてありえない(はず)のです。
では、もし露地栽培でチッソ欠乏症が発生したら?
答えは簡単、それは食物連鎖などの自然サイクルが循環していない事になります。例えば、防草シートで覆って草が生えない農園であったり、薬剤をたくさん撒いて虫や小動物が寄り付かない農園。
そういった自然と隔絶された環境になるほどチッソ欠乏症や微量成分の欠乏が発生しやすくなります。
人間にとって管理栽培しやすい農園は決してブルーベリーにとって生育しやすい環境ではありません。そういった農園であれば肥料の重要性が増していくことになります。
なぜ施肥基準量があるのか
農林水産省のHPにはこのように書いてあります。
施肥基準利用にあたって
平成28年12月更新
化学肥料や堆肥などの施肥は作物に栄養を供給するために不可欠ですが、過剰な施肥はコスト面でデメリットが大きいだけでなく、環境に悪影響を及ぼすことがあります。
適正な施肥を行うためには、都道府県の「施肥基準」に則した施肥を行うほか、定期的に土壌分析を行い、その結果を「土壌診断基準値」と照らし合わせてほ場の状態を把握し、ほ場に肥料成分が過剰に蓄積している場合には、「減肥基準」を参考に肥料の種類や施肥量を見直すことが重要です。
農林水産省:都道府県施肥基準等より一部抜粋
要約しますと、「いい作物を育てるには、肥料は畑の状態と照らし合わせて与えて、時には減らす事も考えないといけません。」という事になります。ですから入門書や肥料袋のウラに書かれている分量を鵜呑みにしてはダメ、という事になります。
入門書や肥料袋のウラには「減肥」についてほとんど書かれていません。本も肥料も売らないと商売にならないので「減肥」について書くわけにはいかないのでしょうか?それにしても不親切です。
適切な肥料の量とは
まず始めにお尋ねします。全く肥料をやらずにブルーベリーを育てた事はありますか?
ほとんどの方は経験ないと思います。私は開園する前、無肥料栽培にチャレンジした事があります。もちろん、生育は緩やかに枝ぶりもこぢんまりとし、結果枝の発生も控えめになります。
ですがこれだけは断言できます。ピートモスを使ってしっかり土壌改良した場所であれば枯れることはありません。そして多くの方は「肥料を遣りすぎ」の状態に陥っています。
せらす果樹園でも色々試しました。
年3回の肥料を与えると不要なサッカーや徒長枝、狂い咲き(意図しない時期の開花)が増えます。年2回でもサッカーや徒長枝が増えます。
どちらにしても剪定の手間が増えたり、収益につながらない開花が増えます。つまりお金と労力を使って、時間と儲けを減らしている状態になるのです。
では最適な施肥量とはどれぐらいでしょうか?それは「量や回数」の問題ではありません。せらす果樹園の考えるベストな施肥量とは、「立派なシュートがシーズン中に、株元から2~3本生えてくる量」と考えています。
なぜ立派なシュートが2~3本?
剪定の話と少しかぶりますが・・・。
せらす果樹園では主軸枝6~8本仕立てで栽培しています。そして4~5年サイクルで主軸枝を更新していきます。つまり「将来的に主軸枝になりそうなシュートが毎年、最低でも1本欲しい。」という事になります。
しかし、生き物相手ですので思った所にシュートが生えない事もあります。また自然災害や害獣の被害などもあります。そういった時の保険的な意味合いで2~3本としています。
2~3本のシュートが生える肥料の量ってどれくらい?
上記に書いたとおり、せらす果樹園では10-12-10の緩行肥料を年に1回60グラムを基本量としています。
しかしこれはあくまでせらす果樹園の場合です。最適な量はあなたが育てている畑やポットで実際に試してみるしかありません。もしヒントがあるとしたら・・・
- ポット栽培や多雨地域など→増肥
- 露地植えで畝構造になっている場合→増肥
- ハウスや設備などで自然とは隔絶された状況→増肥
- ラビットアイなど丈夫な品種→減肥
- 野菜など育てていた畑で栽培する場合→減肥
- 黒墨土など良好な土壌で栽培する場合→減肥
- 近くに山や林があって有機物が常に補給されている場合→減肥
などでしょうか。
つまり、有機物が少ないほど、水の出入りが多くなるほど、肥料を多めにするという事です。
しかしあくまでこれは一例です。実際には微調整して、あなただけの理想の施肥体系を築きあげてください。
その他の注意事項
ブルーベリーに限らず色んな植物で、調子が悪くなったら色んな肥料を与えていませんか?しかし多くの場合、肥料とは関係がない事が原因で調子を崩しています。
そして追い討ちをかけるように肥料の嵐。これで枯れないはずありません。植物が調子を崩したときこそ、土壌バランスをニュートラルに戻す工夫をするべきです。
初心者の方が陥りやすいのですが、色んな肥料を与えてしまう事。これでは何がどのように利いたのか、もしくは悪影響を及ぼしたのか分かりません。
使う肥料は1種類だけにして、生育の維持は「量や回数」で調整するように心がけてください。慣れてくると肥料をブレンドして与えてみたくなりますが、その場合もきちんと各肥料の量をメモして「再現性がある」ブレンドをしてください。もちろんちゃんと目標・結果もメモつけてくださいね。
まとめ
- 自然界にもチッソは存在している。足りない量、もしくは理想とする成長量を狙って肥料を与えるようにする。
- 減肥も選択肢に残しておく。大きくなりすぎるラビットアイなどは減肥で省力化を狙うのもアリ。
- よく紹介されている施肥量は眉にツバつけてみること。理想的な施肥量は色々な要因で変わってくる。
- 調子の悪くなったブルーベリーに慌てて肥料を与えない事。
- 肥料のブレンドは目標・結果・再現性を記録すること。気まぐれなブレンドは迷宮入りする元。
最後に
いかがでしたか?
肥料は、決められた量をやる理由は全くありません。何も考えずに決まった量にしてしまうと調子の良い樹は栄養不足、悪い樹はダメージを与えてしまう事になりかねません。
あなたの栽培している場所、あなたの栽培スタイルに最適な量が必ずあるはずです。型にとらわれず、最適な肥料の与え方を考えてみてください。
それでは今日はこの辺で。
バイバイ!
※2018.1.7 加筆&修正
※2018.8.8 加筆
BBを不織布ポット40リットルで栽培したいと思っています。
1.一年生苗をいきなりこれに植えてはいけませんか?
いけない理由はどうしてでしょうか?
2.不織布根域制限栽培でも、数年したらポットから出して根切の必要がありますか?
違う表現をすれば根巻きはするのでしょうか?
3.ピートモスも数年後には腐植して減量すると思われますが、補充の間隔はどれほどでしょう?
4.ダイナミック10以外に微量要素は必要ありませんか?
5.ダイアジノン粒剤でコガネムシ幼虫の駆除について何か地検はありませんか?
宜しくお願いします。
せらす様
早速のご回答ありがとうございます。
不織布ポット栽培をしようとRE,NHB,SHB等12本苗注文しましたが、ポット栽培では加湿、乾燥対策や
鉢替えを考えると問題山積。とても無理なこと判明しました。スペースの関係上2本のラビットアイを地植え栽培しようかと思い至りました。これからも
ご指導ください。
1.植えていけない事はありません。
但し、水管理がシビアになる事と、生育が遅くなりがちです。
ブルーベリーの根は生育に酸素と水を必要とします。店先で売っているブルーベリーのポットが根鉢の回りにびっしりと埋め尽くされているのを見たことはありませんか?
これは水分はもちろんですが、酸素を必要としているために根が中心部よりも壁際を求めて行くために起こる現象です(ほとんどの植物に似たような現象が見られますが、野菜などは横よりも底などに根が回る傾向が強いです)。
従って「小さい苗木を大きな鉢に植える」という事は根に空気が行きにくくなる上に、保湿する材料が多いので(根量に相対して土が多い)成長が鈍くなったり、根腐れを起こしやすくなってしまいます。
あらかじめ大きな鉢に植えるメリットとしては、植え替え頻度が少なくなるという事でしょうか?
しかし、大きな鉢で植えた場合は、当年は十分に根が回ってないことが多いので引き抜いた時に根鉢が崩れてしまいます。ポット栽培では根の状態を見るためにも(生育やコガネ)年に1回くらいはポットから根鉢を引き抜いて底面を確認することをお勧めします。
以上の理由から生育年数に合わせたポットサイズでの栽培をお勧めしています。
2.ブルーベリー栽培において、露地で不織布を使った根域制限をするメリットは特にないと思います。
根域制限栽培は、品種の矮小化や施肥量の均一化、伝染病の伝播を防止する目的で使われます。ブルーベリーの根は浅根ですが、せいぜい樹高の1.5倍程度にしか広がらないので「メチャクチャ密接して植えたい」のような理由がなければ特にメリットはありません。均一に潅水する必要もあるので潅水装置なども必要になるかと思います。
質問内容は「ポットから出して根切りの必要はありますか?根巻きはするのでしょうか?」との事ですが成木を販売する目的でなければ根域制限する必要はありません。ちなみに根切り自体は、休眠期であれば問題ありません。サッカーの処理とやってる事はほぼ変わりませんので。
3.定着したブルーベリーにピートモスの補充は必要ありません。
露地に植えて数年たったブルーベリーにピートモスを追加したことは一度もありませんが元気に育っています。経験則で申し訳ありませんが定着後のピートモスは不要と思っています。むしろ補充が必要なのは有機物です。近所が山で落ち葉などの有機物が畑に落ちてくるような環境でなければ有機物の補充が必要かと思います。
もちろんピートモスも有機物なのでピートモスでも良いのですが、単価が高いのでせらす果樹園では落ち葉や刈った草などを十分に乾燥させて株元に積んでいます。生育に問題はありません。
初期にピートモスを大量に使用するのはphショックを緩和するためと土壌に有機物を補給するため、とお考えください。
4.せらす果樹園ではダイナミック10しか使用しておりません。
標記のようにせらす果樹園ではダイナミック10しか使用しておりませんし、微量要素の欠乏症なども出たことがありません。ポット栽培のような根域が限定される環境では欠乏症が出やすい傾向にあると思います。そういった場合は個別対応で対処療法的に微量要素を与えてやれば大丈夫かと思います。
5.露地栽培で農薬を使うことが滅多にないので、一般的な知見しかございません。
せらす果樹園の露地栽培においてコガネムシの幼虫が問題となったことがありません。それ故、ここ数年はダイアジノン等の農薬を使った事がありません。一説によると剪定枝を株元に撒いておけばコガネムシは腐食した枝の方を好むので根をあまり食べない、と聞いたことがあります。真偽のほどはともかく、せらす果樹園では果実を直接食害するマメコガネの方が深刻なので夏場にフェロモントラップを設置しています。マメコガネに混じって普通のコガネムシも捕獲できるのですが、フェロモントラップのおかげでコガネムシ自体も少ないのかもしれません。