こんにちは、せらすです。
先日まで小雪が舞っていましたがだいぶ暖かくなってきましたね。
ブルーベリーももうすぐ開花です。
さて今日はブルーベリーの受粉について。
皆様がどのような栽培スタイルをされる場合であっても、ブルーベリーを楽しむ要素において「収穫」は一番の関心ごとではないでしょうか?
ではどうやったら収穫できるのでしょうか?
そのためにはブルーベリーの生育サイクル「花芽分化→開花→受粉→果実肥大→収穫」をたどっていく必要があります。
今日はその中から「受粉」について記事を書いていこうと思います。
収穫のノウハウについてはこちら
美味しいブルーベリーを収穫するために知っておきたい事
ブルーベリーの花の構造
昨年の夏から秋にかけて、きちんと花芽分化されていれば翌年の春頃にブルーベリーの花が咲きます。
花を下から覗くとこのように見えます。
わかりやすく図を断面図で描いてみましょう。
ブルーベリーの花は下のような構造になっています。
ブルーベリーの実ができるためには受粉という現象が必要になります。
受粉は理科の授業で習いましたよね?
簡単に書くと「柱頭(めしべ)に花粉が付着すること」です。
ブルーベリーは受粉すると下記のプロセスを順番にたどり、果実肥大をしていきます。
- 花冠・花粉放出孔が脱落
- 柱頭が脱落
- 子房が空を向く
このプロセスが完了した状態を一般的にブルーベリーの受粉のサインとしています。
その後、初夏に向けて果実の肥大が始まっていくのです。
上の写真(2016.4.16撮影)と下の写真(2016.4.22撮影)は同じ部位の写真です。
上の写真では「開花中の花」と、「受粉が完了し花冠が脱落している花」が混在しています。下の写真ではほとんどの花が「花冠・柱頭・花粉放出孔が脱落し、子房が空を向いている状態」になっています。
ちなみに受粉可能な期間は開花後3~6日間、そして開花後10日以上経過すると花自体が脱落すると言われています(ブルーベリー全書 P.168より)。
しかし、せらす果樹園では一部の極早生品種において3週間ほど開花し、その後に受粉結実しています。詳しい要因は未検証ですが、開花時期の中で「降雨・低温・強風」などの訪花昆虫の飛来が困難な状況があった場合、開花時期は延長されるようです。
花芽~収穫までの定点観測動画はこちら
2017ブライトウェル定点観測&積算温度
受粉を成功させるために考える事
ブルーベリーの受粉について考えるべき事は
- 同系統2品種以上のブルーベリーがあるか
- 開花時期が揃っているか
- 訪花昆虫が飛来するか
この3点になります。
収穫を目的にするのであれば、この3点はブルーベリーの栽培を決意する前に検討しておいてください。
開花時期になって何かが足りない!となっても対応が難しいからです。
特に営利栽培の場合は入念な下調べをすることをおすすめします。
それでは各項目ごとに説明してきます。
ブルーベリーは他家受粉
ブルーベリーは基本的には他家受粉です。
一部のハイブッシュ系は自家受粉する品種もありますが、どのような品種であれ他家受粉で結実した実の方が高品質(味・サイズ)になるようです。ですので「どうしても栽培スペースが足りない、けどブルーベリーを栽培したい!」という方を除いて、同系統で2品種以上のブルーベリーを用意してください。
補足ですが、近年のレポートではハイブッシュ系はラビットアイ系の花粉で受粉できると報告されています。
東京都農林総合研究センター平成16年度 研究成果レポートから
交雑親和性は高く,特にハイブッシュを種子親にした場合は高率で種子が得られる。
この文面通りに受け止めると、「ハイブッシュ × ラビットアイ」での栽培で収穫が楽しめそうです。
(もちろん、開花時期が重なる事が前提。恐らく、ラビットアイが種子親になってもOKだと思います)
ちなみにどんなブルーベリーでも、他品種がないと絶対に果実ができないわけではないようです。結実率が悪いと言われているラビットアイ:ウッダードを完全に遮断した状態で栽培しても1%前後は収穫できたという研究結果もあるようです。(ブルーベリー全書 P.173より)
開花時期は揃っているか
どんな優良品種でも花粉がなければ受粉しません。
花粉は開花していないと発生しないので、栽培するブルーベリーの開花時期が揃っているか確認してください。
これから栽培を始める方は開花時期などは分からないでしょうから、大関ナーセリーさんのHPに掲載されている品種別開花時期一覧などを参考にしてみてください。
気をつけて欲しいのはそのまま鵜呑みにしないこと。桜前線の北上も1ヶ月かかるように、地域(緯度・標高など)によって開花時期は変わってきます。せらす果樹園(広島平野部)では大関ナーセリーさんで掲載されておられる品種別開花時期一覧より、10日ほど早く開花し、1週間程早く散ります。
ですので、これからブルーベリー栽培を始められる方は「表に対して何日早いのか・何日遅いのか」ということを確認し、その関係比率で開花時期を想定して栽培する品種を検討する事をおすすめします。
実際にはある程度は誤差があるでしょうから、最終的には「あなたの地域の・あなたが栽培しているブルーベリーの開花時期」を把握するようにしてくださいね。
訪花昆虫が飛来するか
何度も言っていますが、ブルーベリーは基本的に他家受粉です。
冒頭にも説明したように「A品種のおしべからB品種のめしべへ花粉を運ぶ」といったプロセスがなければ受粉は成立しません。
そこで重要なのが訪花昆虫です。
上の図でも分かるように、ブルーベリーの花粉放出孔は花冠の中に隠れており、花粉は粘着質なので「風・水」によって花粉が花から花へ移動するのは困難とされています。つまり、自然状態では昆虫による受粉しかありません。
ですので、栽培する場所に訪花昆虫が飛来してくるか、よく観察しておいてください。
私の経験ではよっぽどの街中でも訪花昆虫は生存しています。訪花昆虫を見かけないのは「ベランダや建物の屋上」「付近に農薬を撒く畑が多い地域」「ハウスや建物の中」ぐらいだと思っています。このような場所で栽培を予定される方は注意してください。
どうしても訪花昆虫がいないような場所では人工授粉に頼るしかありません。しかし、ブルーベリーの花は「多く・小さく」、人工授粉は多大な労力がかかります。そして人工授粉を行っても訪花昆虫などの受粉より結実率が悪いとの資料もあります(訪花昆虫+人工授粉が最強らしいですが、当たり前ですね。ブルーベリー全書 P.173より)。
どのような訪花昆虫がいいのか
ブルーベリーの受粉を手助けしてくれる昆虫は様々な種類がいます。
代表的なのはハチバチと呼ばれるミツバチやマルハナバチですが、花粉を媒介してくれるのはハナバチだけではありません。
中にはハエやアブ、ハナムグリのような甲虫類も受粉を手助けしてくれます。
採蜜に来たハエの仲間。
長い体毛に花粉が付着しています。
花冠にぶら下がり、器用に採蜜するハナムグリの仲間。
このような割と大きめな昆虫である甲虫の仲間も受粉を手伝ってくれます。
とはいえ、やはりブルーベリーの受粉にはハナバチの仲間がベストです。
ハナバチが受粉を行うメリットを挙げてみると
- 非常に長い口吻(こうふん:舌とノドのような役割をする器官)を持っており、効率よく受粉を行ってくれる。
- 採蜜中に羽を振動させ花粉をたくさん落とし、体に付着させる。
- 社会性を持ち仲間を呼んでくれる。
- 行動半径が広く、敏捷性がある。
このことから、ハナバチの仲間がブルーベリーの受粉にはベストと言われています。
訪花昆虫が来ない場合
ブルーベリーの栽培前に訪花昆虫が来るような環境であるか確認しておくのがベストですが、事前に訪花昆虫の飛来を確認できない場合もあると思います。このような場合はどうすればいいのでしょうか?
基本的には訪花昆虫もそこに採蜜できる対象がなければやってきません。
ですのでブルーベリーを栽培していない状態では訪花昆虫は飛来しないかもしれません。
しかし、ブルーベリーが成長し、たくさん花を咲かせるようになれば訪花昆虫が飛来する可能性は十分にあります。
他にも人為的な問題で訪花昆虫がこなくなる事もあります。特に「農薬や草刈り」は訪花昆虫の飛来を遠ざけてしまう可能性があります。
農薬について
開花時期になると毛虫などが発生しはじめます。そこで農薬を撒いて対処する場合もあるかもしれません。
しかし、例えばマイマイガなどのブルーベリー登録農薬「サイアノックス水和剤」はハナバチにも影響を及ぼします。
参考:サイアノックス水和剤
※住友化学の農業支援サイト i-農業より
サイアノックス水和剤に限らず、開花時期に殺虫剤系の農薬を使用することは控えるべきでしょう。
個人的には農薬の使用はあくまで最終手段だと思っています。せらす果樹園では滅多な事では農薬を使っていません。
この時期の害虫の駆除はできるだけ手作業で捕殺してくださいね。
草刈りについて
次に草刈りの注意事項ですが、ブルーベリーの開花時期の後半になるとどんどん草が伸びてきますし、雑草の花も咲き始めます。
そこで草刈りや除草剤の散布を行うわけですが、ちょっと待ってください。
そこは訪花昆虫が採蜜に訪れたい場所になっているでしょうか?
訪花昆虫も生物ですので「安全で・巣から近くて・花がたくさんある場所」に来ようとするはずです。にも関わらず、雑草を片っ端から刈ってしまうと、訪花昆虫の隠れ家や住みかもありませんし、ブルーベリー以外の花もありません。
私がミツバチであれば、草も生えないような場所より、色んな花がたくさん咲いている場所を選ぶと思います。
実際にせらす果樹園では、開花時期の前半は訪花昆虫をたくさん園に呼ぶため園内の草刈りはしていません。一度記憶してもらえればハナバチは仲間を呼ぶので、後半は草刈りをしても問題ないようです。
これはあくまで一例ですが、農薬や草刈りを控えて、訪花昆虫が来たくなるようなブルーベリー栽培環境を整えてみてください。
余談ですが、ブルーベリー全書 P.168に「ミツバチはブルーベリーの花よりタンポポの花を好むようである。」と書かれていますが、経験的にはタンポポの花を刈っても残してもブルーベリーの受粉にはあまり問題はないと思っています。採蜜にきたハナバチは色んな花を巡回しているようで、タンポポの花に来ただけで帰ってしまうハナバチは少ないのではないでしょうか?
事実、タンポポの花をそのままにしておいてもブルーベリーの受粉には問題ありませんでした。個人的には開花シーズン最初は、どんな花だろうとたくさん咲いてた方が後々にハナバチがたくさん来てくれると考えています。
最後に
いかがでしたか?
ブルーベリーを栽培する最大の楽しみは「収穫」ではないでしょうか?
ブルーベリーの購入を決意したのであれば是非ブルーベリーの収穫までこぎつけて頂きたいと考えています。
そのためには今日紹介した様々な注意点を考慮してみてください。
今回のキーワードは
- 2品種以上
- 開花時期
- 訪花昆虫
です。
「ブルーベリーをこれから育ててみたいけど収穫できるか不安・・・」
「ブルーベリーを栽培して何年も経つけど全然収穫できない・・・」
などの事があれば今日の記事を参考にしてみてくださいね。
それでは今日はこの辺で。
バイバイ!
※今回の記事は開花時期・受粉を考えるをリライト・再編集したものです。
※2018.4.20 写真差し替え&追加、クリックで画像を拡大できるように修正、記事一部修正&追記。
※2018.4.22 追記。
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