こんにちは、せらすです。
せらす果樹園にやってくる招かれざる客「害獣」。せらす果樹園の場合はスズメとタヌキになります。
ここ何年も対策に思案を重ねて時間を費やしてきた結果、ようやく獣害がゼロになりました。今回はその対策の内容とポイントを紹介していきたいと思います。
目次
害獣とは
まずは害獣の定義からです。
害獣(がいじゅう)とは、人間活動に害をもたらす哺乳類に属する動物一般をさす言葉である。人間の多い地域では、家畜などの飼育動物以外はほとんどがこれに含まれる可能性がある。
害獣ーwikipedia最終更新 2017年6月25日 (日) 14:47より
害獣というと獣も鳥も一緒くたに扱う事が多いのですが、厳密に言うと哺乳類だけを指すようです。鳥類や昆虫は当てはまらないようです。
害獣・害鳥・害虫はそれぞれ別の案件ではあるのですが、今回の記事では害獣(タヌキ)・害鳥(スズメ)を害獣として一緒に扱わせて頂きます。ご了承ください。
害獣の被害
スズメ
せらす果樹園ではブルーベリーの栽培をはじめてから2年目にはスズメの被害にあっています。2年目の冬に防鳥ネットを自作して防除に励んだのですが、効果はイマイチでした。
スズメの被害はブルーベリーの果実を食害される事なのですが、その食害のされ方がとてもひどいのです。一つの果実をちゃんと食べきるならまだ許せるのですが(許せませんけど)、「広い範囲にわたって一口だけかじる」という事をされます。
当然多くの果実は売り物になりませんし、傷んだ果実を回収しなくてはなりません。これが想像以上の手間で、収穫と変わらない時間がかかる上に1円にもなりません。色づきはじめた未熟な果実も食害されるので当面の収穫もなくなってしまいます。
中に侵入したスズメは外に追い払わないといけません(これもかなりの労力です)。長いことネット内で追い回しているとバテてしまうのか捕獲することができます。捕獲したスズメは外に逃がしてやります。
タヌキ
せらす果樹園では当初、タヌキの被害はなかったのですがスズメの防除が成功しはめじめるとタヌキの被害が発生するようになりました。
タヌキの被害はスズメと同じくブルーベリーの果実を食害されることなのですが、その被害はスズメより深刻です。タヌキはブルーベリーの果実を食べるために枝を折ります。タヌキの体重は4kg前後あるので枝にぶら下がられると折れてしまいます。折れると来期以降の収量にも影響します。
未熟果は食べないようですが、枝ごと折るので未熟果も被害にあいます。したがって今期の収量も激減してしまいます。
※動画中のコメントで「捕獲の方向で・・・」と言ってますがこれまでに捕獲していません。狩猟免許は取得したのですが現在は防除を徹底して侵入できないようにする方針でやっています。
結局、多くの場合はこれらの害獣とブルーベリー農家の共存はできないようです。
話して分かる相手でもありませんし、収穫までこぎつけたいのであればキッチリ対策を取る必要があります。
害獣対策について
害獣対策の基本は「侵入させない」「寄せ付けない」「追い払う」になります。虫と違って鳥類は許可なく捕獲・捕殺することはできませんし、哺乳類も一部の例外(ネズミやモグラなど)を除いて捕獲・捕殺は禁止されています。
例え自分の農地であっても、農作物を荒らされたとしても許可なく捕獲・捕殺することは法律で禁じられています。
これらを行うには
1 自治体へ申請して許可を得る
2 狩猟免状を取得してあらかじめ申請を出して決められた場所・期間・方法で狩猟をする
しかありません。
狩猟免状を持っていますが現在では使用していません。趣味や採取目的であればともかく、狩猟にかかる手間と費用を考えれば防除だけで済ませた方がコスパは高いと思います。
対策の種類
ここでは実際に試したものや検討したものについて触れています。
対策①防鳥ネット
ブルーベリー栽培において防除の基本となるものです。せらす果樹園でも栽培当初から設置しています。主に単管を利用しているので設置しやすく加工・拡張もしやすいです。
しかし設置当初は狙った効果は発揮できず毎年試行錯誤を重ねてきました。色んな農家さんを見学に行ってそれなりに勉強したつもりだったのですが、やはり素人の作ったものなので隙があるようです。想定外(タヌキの出没)もありましたしね。
業者に設置を依頼すれば設置の手間は省けますが、私がJAを通して見積もりを依頼したときは「1反あたり120万」と言われて驚きました。そこで自作することを決意。結局、半額以下で設置できました。
対策②防獣フェンス
哺乳類からブルーベリーを守るには防風ネットだけでは不完全です。動物の多くはツメやひづめがありますし、知能も高く力がありますので防鳥ネットだけでは簡単に破られてしまいます。
そこで防獣フェンスの出番です。フェンスには繊維で作られたネットとスチール製のフェンスがあります。せらす果樹園ではビニル皮膜されたスチールフェンスを使用しています。費用は30mで5000円程度でした。
対策③爆音機
プロパンなどの燃料を使って音を出す装置です。主に鳥害防止に使われています。費用対効果は高いのですが、せらす果樹園では近所に民家があるために使用できません。
爆音機による苦情が相次いだ為か、00年代半ばから各県で爆音機使用によるガイドラインが公布されました。詳しい内容は各県の農政科に問い合わせて頂きたいのですが、ガイドラインの大まかな内容は以下の通り。
1 爆音機の使用は代替防除ができない場合に限る
2 最小限必要とする期間のみ使用する
3 早朝・夜間は使用しない
4 直近の敷地境界において70デシベルを超えない事
5 できるだけ爆発間隔をあけること
などです。法律ではありませんが使用を検討している方はよくよく考えて設置してください。
余談ですが、爆音機は音だけで害獣を追い払っているわけでなく、空気の振動を利用しているとの事でした。音も空気の振動ですのでこの説明には疑問が残りますが、周波数をチューニングしてできるだけ人間の可聴域外の低周波音を利用しているという事なのだと思います(可聴域外の低周波音も人間のストレスになるとの研究もありますが・・・)。こんな状況ですので最近では爆発音が控えめで響きにくいタイプや、爆発を利用してルアーを飛ばす脅し併用タイプの爆音機も発売されています。
対策④かかし
かかしと言えば田んぼに設置してある人型の造形物ですが、CDや反射材をぶら下げる場合もかかしの一種と言えます。安価で設置しやすいですが、動物達はそのうち慣れてしまうので期間と共に効果が薄くなってしまいます。
せらす果樹園では防鳥ネットの隙間から侵入するスズメを追い払うために設置していた時期がありましたが、設置2日目にはネット内に侵入されていました。あまり効果は期待できないかもしれません。
対策⑤忌避剤
硫黄、木酢液や唐辛子など動物が嫌がる臭いで追い払う方法もあります。液剤や粉剤を散布したり、臭気の元を吊るしたりします。散布・設置直後は効果が高いのですが、経時劣化や風雨にさらされることで効果は減退していきます。
永続的な効果は期待できないので補助的に使うのがいいかと思います。ただし、モノによっては運用に制限があります。例えば硫黄は乙種第2類危険物に該当しますので100kgを超えて保管する場合は危険物取り扱い倉庫などが必要になります。
忌避剤の中にはオカルト的なものもありますので注意してください。「狼の尿」などの忌避剤にはイノシシには全く効果がないとの研究結果もあります。どの忌避剤も効果は限定的(雨の日や風の日、動物の種類や時期によって効果は異なる)で薄れていくものと認識する必要があります。
忌避剤は独特の名前が多く、それと成分が分かるネーミングになってないものが多いです。見た目だけでは液体や粉末の成分は把握できません。ですので、使用前に成分や用法などをきちんと確認しておいてください。
対策⑥電気柵
侵入してくる動物を電気ショックで撃退する柵です。近年は田畑でよく見るようになりました。せらす果樹園も設置を検討したのですが、色々考えた結果見送りました。
なぜかと言うと、
1 せらす果樹園で問題になっているのはタヌキであること
2 タヌキは比較的小型な動物なので電線を低く(地面から10cm程度に)設置する必要がある
3 低く設置すると雑草などに電線が接触しやすくなる
4 雑草と電線が接触すると効果が低下し、漏電の恐れがある
5 設置・メンテナンスコストが比較的高く手間がかかる
という理由です。
結果的に費用対効果は低いと判断して見送りました。周囲に障害物がない平地で、対象がイノシシや鹿などの大型動物の場合に電気柵は向いていると思います。2015年には電気柵による感電死亡事故のニュースもありました。設置にも色々ノウハウがあるようなので検討されている方はよくよく調査した上で設置してください。
対策⑦番犬
一部の農家さんでは番犬による害獣撃退も行っているようです。実際に効果はあるのでしょうが、犬一匹飼育する手間と費用は安くありません。せらす果樹園では住居と圃場が離れていること、防鳥ネット内で番犬をある程度自由にさせつつ、逃げ出さないようにすることが困難という理由で見送りました(つないでいると迂回されます。吠えるだけでは害獣は危険はないと認識して慣れてしまうようです)。
ちなみに私は犬より猫が好きです。
余談ですが野良猫が多く徘徊している場所ではスズメの被害が少ないように思えます。野良猫が防鳥ネット内に入り込んでしまった時があったのですが、スズメは近づいてきませんでした。天敵を配置するのは防除としては効果的かもしれません。
実際に使用している対策
せらす果樹園では防鳥ネット・防獣フェンスを基本にして、サブとして忌避剤(硫黄)を使用しています。他の対策を採用しなかった理由は以下の通り。
爆音機:近所に民家があるので不可。
かかし:設置したが効果は薄く撤去。その後利用していない。
電気柵:タヌキの撃退には電線を低くする必要があり、雑草の除去・漏電の危険性・コストの面から採用せず。
番犬:費用対効果は得られないと判断。犬より猫が好きなので採用せず。
防除はメインの対策(防鳥ネット・防獣フェンス)とサブの対策(忌避剤)を併用すると効果が高くなると思います。硫黄はブルーベリーの土壌改良の資材としても使えるので持っておいて損はないと思います。保管にはくれぐれも注意してください。
対策のポイント
せらす果樹園では防鳥ネットと防獣フェンスをメインに防除を行っています。設置する上で過去に試行錯誤を重ねたポイントを紹介していきます。
ポイント①防鳥ネット
まず一番のポイントは隙間を作らない事です。当たり前の事を言っているようですが、スズメは直径3cmほどの穴があれば簡単に侵入してくるのです(2.5cmでも侵入されるそうです)。設置した当初は良くても経時劣化でネットに穴が開いてしまったりします。もしスズメが侵入していたら隙間が開いていないか、劣化でほつれていないか確認してください。
天井ネット
天井ネットは20mm目合・2000デニールがおすすめです。重くなるので天井ネット下に案内線をめぐらせて、さらに風でバタつかないように押さえロープで固定してください。天井ネットはシーズン毎に脱着を繰り返すので結構消耗します。シーズン前・シーズン中は随時点検をして、ほつれていたり穴が開いていたら水糸などで補修するようにしてください。
横ネット
せらす果樹園の横ネットは防風ネットを使用しています。1~12mm目合が流通しているようです。せらす果樹園では4mm目合を利用しています。4mm目合の防風ネットは最も一般的な防風ネットで様々な幅が販売されています。せらす果樹園の防鳥ネット棚は2.2mの高さで設計しましたので2.5m幅の防風ネットが必要でした。そのために4mm目合の防風ネットにしました。
何度も書いていますが、防鳥ネットにおける防除は隙間を作らない事が重要です。私はよく刈り払い機のマフラーを横ネットに当てて溶かして穴を開けてしまっていました(草刈りをしていると気づかないのです)。穴が見つかった場合は水糸などで補修してください。
人間が出入りする部分は動物達にとっても出入りしやすい箇所なので隙間を作らないように入念にチェックを行ってください。せらす果樹園では出入り口のネットの裾にスチールチェーンを巻き付けています。こうするとチェーンの重みでネットが地面に密着しスズメは入ってこれなくなります。密着性を高めるためにチェーンの当たる箇所の地面を平らにして除草しておけば完璧です。
ポイント②防獣フェンス
防獣フェンスはタヌキ対策の要となります。出入り口を除いて全周にわたって設置しています。ここで重要なのは底の部分になります。タヌキは侵入口がないと分かると穴を掘って侵入してきます。タヌキは比較的小型の動物なので直径10cmの穴があれば侵入してきます。ですのでフェンス下部の地面も守らないといけません。
そこで防獣フェンスの下部20cmほどを地面に埋めるか、地面に沿ってフェンスごと杭を打つことをおすすめします。
埋設は手間になりますが、草刈りなどの手間を考えるとこの方法がおすすめです。
地面に沿って杭を打つ場合は、地面がそれなりに硬い事が条件となります。田畑跡地のような柔らかい土壌に杭を打ってもしっかりと固定されずにめくり上げられて侵入されてしまいます。設置する地面の状況をよく検討してどちらかの方法を選んでください。
ちなみにトタンなどでも代用できます。ビニルハウスなどではよく使われている手法のようです。
ポイント③忌避剤
せらす果樹園ではブルーベリー栽培の土壌改良に使う硫黄粉を忌避剤として使用しています。とはいえ忌避剤として使うのは限られた場面だけです。例えば、傷んだネットやフェンスをきちんと補修する時間がない時や、補修後に地面がしっかり踏み固まっていない場合などです。
忌避剤やかかしを常時使用していると動物は慣れてしまう可能性があります。硫黄に慣れてしまうといった話は聞いた事はありませんが、「資材代」「保管のリスク」「硫黄が危険物」である事を考えると日頃から大量に運用すべきではないと考えています。防除の資材として忌避剤はサブの役目であり、ここ一番で効果を発揮できるように運用しています。
他に気をつけること
その他の注意点について紹介しておきます。
エサがあることを知らせない
一度そこにエサとなるものがあると知り、味を覚えてしまうと定期的にやってくるようになります。害獣達も生きる為に必死なのですから仕方ないことです。そして「ガードを突破できる」という経験を積ませてしまうとさらに死に物狂いでやってくるようになります。
こうなると非常に強固な対策が必要になり、栽培管理に大きな影響を与えます。ですので、果実を害獣達が容易に来れる場所に捨てたりしないようにしてください。傷んだ果実も同様です。
・そこにエサがあることを知らせない
・あったとしても突破できないガードがある
これらを徹底させていけば害獣被害は少なくなっていきます。
新たな脅威が見つかる事もある
せらす果樹園では当初はスズメの被害ばかりでした。しかしスズメの防除が成功しはじめると今度はタヌキが出没するようになりました。そしてタヌキの防除に成功しはじめると今度はマメコガネの被害が発生するようになりました。
つまり、がんばって防除して現時点でとある害獣を寄せ付けなくなったとしても、「他に台頭してくる害獣がいるかもしれない」という事です。ブルーベリーに害する生物で優位なものから順番に脅威になっていくのです。そして台頭している害獣がいる間は他の害獣の存在は分かりにくいのです。
せらす果樹園の例で言えばスズメ→タヌキ→マメコガネとなっているのですが、スズメの防除に成功しないとタヌキは食べるものがないのでやってきません。スズメの防除に成功すると今度はタヌキの番になります。これは当初想定できませんでした。タヌキなんて見かけませんでしたしね。
栽培当初は居なかったはずの脅威が新たに出てくるかもしれない、という事を考えておいてください。
余裕を残しておく
こういった状況ですから、ある程度は余裕を残しておく事が大事です。はじめからタヌキなどの被害を想定してもいいのですが、地域によっては現れないかもしれません。そうなると事前に行過ぎた対策をしておくと無駄な出費になります。また設備構造や防除体系が複雑化して、栽培管理が煩雑になるなどの悪影響も考えられます。
もしくは、タヌキじゃなくてウサギや鹿、イノシシになるかもしれません。その場合は新たに対策をする必要が出てきます。次にブルーベリーを狙っているのは何なのか、もしくは他にはいないのか?栽培当初は分からない事がほとんどです。ブルーベリーを栽培することでそれを目的に新たに住み着く生物もいるのです。
ですので防鳥ネットを基本として、新たな対策をするための余裕は残しておくことが大事です。その余裕とは「拡張する土地」であったり「対策にかけるお金」であったり「作業する時間」であったりします。余裕がないと対策することはできません。
まとめ
- 害獣対策は「侵入させない」「寄せ付けない」「追い払う」が基本。捕獲・捕殺は許可が必要。
- 防鳥ネットを基本にその他の動物の対策を考えていく。
- 設置する対策は対象の動物や法律、環境などをよくよく検討すること。
- 防除したい動物のサイズ以上の隙間は作らない事が重要(スズメは3cm、タヌキは10cm)。
- かかしや忌避剤などの防除資材は慣れてしまうので利用するタイミングに気をつける。
- そこにエサがあるという事や、ガードを突破できるという事を覚えさせない。
- 害獣は1種類だけとは限らない、他の害獣が台頭してくる事も考えておく。
- 様々な対策をタイムリーかつ効果的に行うには余裕が必要。
最後に
いかがでしたか?
今回はせらす果樹園で試行錯誤を重ねて分かった個人的な害獣対策の基本的なポイントについて紹介してみました。せっかく育てたブルーベリーを害獣達のエサにならないように、参考してもらえれば幸いです。
それでは今日はこの辺で。
バイバイ!
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