こんにちは、せらすです。
今回はこれまでのブルーベリー栽培で培ってきた、剪定に対する考え方や色んな記事にバラバラと掲載していたものをまとめた内容となっています。
剪定とはただ、枝を切るだけではありません。
切った枝は未来の事、つまり意図がなければなりません。
今回の記事はこれからブルーベリーの剪定を始めるに当たって、まず読んで頂きたい内容です。
また、経験者の方や実際に農園でブルーベリーの剪定に携わっている方にもご一読くだされば幸いです。
剪定の目的
最初は剪定の目的から考えていきましょう。
なぜ剪定をしなくてはいけないのでしょうか?
目的をはっきりさせないと剪定はうまくいきません。
せらす果樹園での剪定は下記の項目に重点を置いて剪定しています。
- 来年の果実の収量と品質の確保
- 栽培管理しやすい樹形を維持する事
つまり、剪定が終わったブルーベリーは全て、
・翌年の結果枝(収量)が確保されており
・収穫や管理作業に適した状態で
・来期以降の樹形や更新が考慮されていなければならないのです。
簡単に言えば未来に向けたメンテナンスみたいなものですね。
これらの目的をはっきりさせておかないと剪定するたびに違う形の樹形になってしまったり、収量が安定しません。
それでは順にこれらの項目を説明していきますね。
来年の果実の収量と品質の確保
ブルーベリーの収量はいつ決まるのか?
ブルーベリー栽培がブルーベリーの収穫を目的にしているのであれば「来期の収量の確保」が目的の第一義にこなければなりません。
ではブルーベリーの収量はいつ決まるのでしょうか?
ブルーベリーの収量は夏から秋にかけて決まります。
花芽分化ですね。
夏にブルーベリーを収穫しているときに、すでにブルーベリー達は来期に向けた準備(生理現象)をしています。
この時に健康状態が悪いと、正常に花芽分化しません。
花芽の数が少なければダイレクトに収量が減ってしまいます。
つまり、この時期に来年度の収量がほぼ決まると言っても過言ではありません。
どんなに剪定をうまくやろうとも、収量の絶対量が増える事はありえません。
ブルーベリーの健康管理をきちんと行い、正常に花芽分化をさせる。
これが収量アップの基本です。
そして剪定を行うことで「収量と果実品質のバランス」を整える、というわけです。
今年度の収量はどのくらいだったのか。
キチンと花芽分化は行われているのか。
これらの情報を基に、その木の剪定プランを考えていきます。
せらす果樹園では成木の場合、ハイブッシュなら主軸枝6本前後。
ラビットアイなら主軸枝6~8本に仕立てています。
※品種や生育具合で異なります。
収量の大まかな計算と考え方
花芽1個で8~12個の実ができますから平均果重を3gとした場合、一つの花芽で約30gの収量があります。
主軸枝を8本仕立てにしているラビットアイで、例えば3kgの収穫を目指す場合は、1本の主軸枝で375gの収量が必要です。
3000g ÷ 8本 = 375g
この場合は主軸枝1本につき、19個前後の花芽を残せばOKです。
375g ÷ 30 = 18.75
当然、樹は生物ですし、自然の中で栽培しているのでバラつきもあります。
また、その他の要因で結実不良が考えられますから1~2割はバックアップとして残しておくべきでしょう。
上の表で言えば20~23個の花芽を残します。
不要であれば春先に、そのつど調整していくのが良いです。
よかったらこちらも参考にしてみてください。
剪定は栽培している人しかできないと思っています。
特に収量の予想や管理は、剪定時期だけのブルーベリーを見ても判断できるものではありません。
1年通してブルーベリーを栽培をしてみないと調子の良い悪いは判断できないと思います。
そして調子が良ければバックアップ以外にも花芽を更に1~2割多く残して多収を狙ってみる。
調子が悪ければ生育重視の剪定をする。
こういった試みも大事だと思いますので是非トライしてみてください。
結実過多を防ぎサイズアップ
全体収量は夏に決まると書きましたが花芽の数を制限することで全体のサイズアップを狙えます。
簡単な考え方ですが・・・
例えば、全体の収量3kgの木があったとします。
この場合、平均果重3gの1000果にするか平均果重4gで750果にするかを剪定である程度コントロールできるというわけです。
※厳密にこの通りになるわけではありません。
しかし、栽培環境や品種ごとに最大果重は決まっているようで例えば、ブライトウェルならどんなに剪定しても
せらす果樹園では直径26mm程度が限界のようです。
無剪定の場合は15~20mm程度の果実ばかりがたくさん採れてしまいます。
特に営利目的で栽培している場合は同じ重さでも、大きい方が単価が上がりますので剪定でサイズアップを狙っていくのがよろしいかと思います。
ただし、花芽の落としすぎに注意してください。
極端な例ですが、全体収量3kgのブルーベリーの木を10果にしても1粒300gにはなりません。
結果としてはトータル100gにもならないでしょう。
このような場合は単に減収となってしまいます。
予想収量の考え方
上記の計算を行うには予想収量を設定しなくてはいけません。
一体どうやって決めればいいのでしょうか?
私は基本的には前年度の実績値で決定しています。
もちろん「1粒何グラムで何粒取れたから・・・。」みたいな計算はしていません。
せらす果樹園では品種ごと・サイズごとに出荷しているパック数は数えています。
例えば、2017年度は100gのブライトウェルを100パック出荷したのであれば合計10kgですね。
10kgから植えてある本数や、主軸枝の数で割ってやれば平均値が出てきます。
全体で10kg収穫した時、4本植えてあれば2.5kg、5本植えてあれば2kgです。
2.5kgで主軸枝が6本ならば1本あたり416gです。
主軸枝8本ならば312gですね。
そして、その年の果実の品質も確認します。
全体的に果実が大きかったら、「前年の剪定時に設定した予想収量より、実力値の方が大きかった」
という事になりますので今年の予想収量を多めに設定して剪定します。
全体的に果実が小さかったら、その逆ですね。
これを繰り返していけば、おのずと予想収量の精度もあがりますし狙ったサイズに収束していくはずです。
このように収量と果実品質を安定させるにはしっかりしたデータ取りが必要です。
仕事としてブルーベリー栽培をしていなければ続けていくのは難しいかもしれませんが安定した収穫と剪定を目指すのであれば、データ取りにも取り組んでみてください。
管理しやすい樹形の維持
収穫のためにブルーベリーを栽培しているのであれば収穫できないような高い位置にある枝や、除草の邪魔になるような低い位置にある枝は除去すべきです。
具体的に言えば、結果枝を「外側かつ、腰~胸の高さ」に集めることが大事です。
順に説明していきますね。
結果枝は外側に
内向きの結果枝は収穫時期になるとせっかく結実しても葉に埋もれてしまいます。
以前の記事でもアップしましたがブルーベリーは果柄痕の状態を見て収穫するので葉に埋もれていると収穫の効率が非常に悪くなります。
ですので、「理想的には」主軸枝は円の形に配置し結果枝はそこから外側に向かって放射状に出すのが、効率よく管理しやすい(品質と効率の良い)ブルーベリーの木になると思います。
具体的にはどうやってこのような樹形にすればいいのでしょうか?
ブルーベリーは頂芽優勢という性質を持っているため、先端部分が良く成長します。
つまり、剪定した直下の葉芽(節)は先端となるため、新しい枝が発生しやすい、という事です。
これを利用して、剪定した直下の葉芽(節)が外側になるように剪定してみましょう。
100%とは言いませんが、高い確率で狙った位置に充実した結果枝を出せるはずです。
膝より下の結果枝は切る
結果枝は当然、果実が成ります。
そうなると重みで垂れ下がってしまいます。
地面についたブルーベリーは誰も食べたくありませんよね?
それに地面に近いと雨が降ったときに地面からの水はねで汚れてしまったりします。
また、株元の除草にも気を使わなくてはならなくなります。
さらに、幹に発生する害虫はブルーベリーにとっては致命的なものが多いので株元を綺麗にして早期発見に努めるべきです。
以上の理由から膝より下の結果枝は、できるだけ剪定するようにしましょう。
管理しやすい樹形作りにおいては、株元の結果枝は不要です。
もちろん、幼木期や結果枝がどうしても足りない時はこの限りではありません。
頭上の結果枝は切る
先ほども書きましたが、収穫するときはどうしても果実の果柄痕をチェックすることになります。
ほとんどの場合、ブルーベリーの実は果柄痕が上か内側に向くので(顎痕が下・外側に向きます)、
頭上にあるような果実は果柄痕の状態をチェックするのが困難になります。
それにブルーベリーの木が高くなると防鳥ネットに当たってしまいます。
こうなってしまうと管理しやすい樹形とは言えません。
頭上にあるような結果枝は剪定してしまいましょう。
その他の不要な枝の剪定
都合が悪い向きに生えている枝や、他の枝と干渉したり、成長が見込めない枝など主軸枝や結果枝になり得ない枝などは樹冠が混みあったり害虫が発生しやすくなるので管理に支障がでます。
これらの枝は積極的に剪定していきましょう。
具体的に言えば
- 交差枝
- 平行枝
- 徒長枝
- 内向きの枝
- 下向きの枝
- 5cm未満の短果枝
などが挙げられます。
これらの剪定はブルーベリーに限らず、果樹を栽培するときの基本的な剪定です。
樹冠内部はすっきりさせて採光や風通しを良くして管理が行き渡るようにしましょう。
よかったらこちらも参考にしてみてください。
空間を上手に使う剪定
せらす果樹園では防鳥ネットを2.2mの高さに設置しています。
実際は畝(高さ20~30cm)構造になっているのでどんなにがんばってもブルーベリーの高さのリミットは2mまでです。
しかし畝間は4m、株間は2mで植えてあります。
つまり、せらす果樹園では樹形は横方向に広げたほうが融通が利くのです。
したがって、せらす果樹園では直立性の品種も開帳性の品種も全て開帳方向に伸ばす樹形作りをしています。
また株間に入って作業することもありますから作業スペースの確保も重要です。
こういった畑の構造や、施設の寸法、管理作業の内容などを頭に入れておく必要があります。
どのような樹形を作ればいいのか
枝の更新について
ブルーベリーは古い枝より新しい枝の方が生産性もいいですし若い主軸枝からは立派なシュートがよく発生します。
古い主軸枝を更新するタイミングは4~5年が目安でしょうか。
古い主軸枝は新しいシュートの発生も少なくなります。
主軸枝はあまり長く使いすぎず、適時更新に努めた方が切れ目なく更新できると思います。
以前挙げた動画で若干触れています。
よかったらこちらも参考にしてみてください。
樹形作りについて
樹形というものは1年の剪定だけで作るものではありません。
毎年の積み重ねでもあります。
来期に向けた剪定だけではなく、2年先・3年先さらには主軸枝を更新する年まで使う事を考慮すべきです。
具体的にはどうすればいいのか。
まず、どんな枝も切る勇気が必要です。
例えば、今年生えてきた立派なシュートの先に花芽がたくさん付いている。
切るのがもったいない、などの理由でこのような枝にそのまま翌年、実を付けてしまうと翌年のそのシュートは、頂芽優勢の法則に従って先端付近しか結果枝が発生しないので中間がスカスカな棒立ちのブルーベリーができてしまいます。
このような剪定を続けていると、あっという間に頭上を越えてしまうでしょう。
低い位置に出てきた結果枝も、そのままにしておくと株元を清潔に保つ事ができません。
ですので不要と思った枝は勇気を持って切る事が重要です。
もちろん、これは知識と経験に基づいた未来予想図(自信)がないとなかなか勇気は出せません。
参考までにせらす果樹園でのブルーベリーの樹形作りもご紹介させて頂きます。
ある程度、ブルーベリーが健康に育っており十分なシュートが毎年発生している、という状況です。
もちろん、絶対にこのように成長する、というわけではありませんが樹形作りの予想図の参考になればと思います。
この絵からスタートです。
1年目の冬
発生した立派なシュートを「膝~腰」の高さで剪定します。
これは翌年の春以降に発生する枝の高さを考慮しています。
(翌年発生する結果枝は腰~お腹ぐらいの高さになります)
この時、先端に花芽がついていても、棒立ちを防止するために翌年以降に収穫・管理しやすい場所に結果枝が発生するような位置で剪定します。
2年目の冬
昨年、剪定したシュートからは状態のいい結果枝が発生しました。
また、中ほどからは勢いのあるシュートが発生しています。
翌年の収穫・管理しやすい位置に結果枝が発生するように「腰~胸」の高さで剪定するようにします。
こうすることで今年の結果枝を生かしつつ、高さを変えて翌年の結果枝の発生を狙う事ができます。
3年目の冬
2年目の秋と似たような状況ですが同様の剪定を繰り返していきます。
不要な結果枝やシュートはどんどん剪定していきましょう。
ここでも状態のいいシュートを探して翌年の結果枝の発生を促す剪定を狙いましょう。
3年目の秋は「胸~首」の高さが目安です。
4年目の冬
ここでも前年までと同様に剪定を行います。
4年目の秋は「首~顔」の高さで剪定しましょう。
これが脚立などを使わないで果柄痕をチェックできるギリギリの高さだと思います。
他の主軸枝が十分育っていて、更新に使えそうなシュートやサッカーがあれば4年目でも更新に踏み切ってもいいかと思います。
5年目の冬
顔の高さまで利用した主軸枝からは新しい立派なシュートは望めません。
その主軸枝に発生する結果枝も勢いがなくなってきます。
こうなったら主軸枝を更新していきましょう。
同じ主軸枝の根元から立派なシュートが発生していればそれを利用してもいいですし、他の主軸枝に属するシュートでも構いません。
良い配置になるようなシュートやサッカーを利用して枝を更新していきましょう。
よかったらこちらの動画も参考にしてみてください。
尚、主軸枝の更新は1シーズンに1~2本としてください。
主軸枝が6~8本仕立てで4~5年間隔の更新であれば、十分間に合うはずです。
たくさんの主軸枝をいっぺんに更新してしまうと収量が安定しませんし、果実の大きさも変動しやすいです。
他に注意すべきこと
無駄な枝を残さないようにする
剪定が終わったあと、不要な部分を残さないようにしましょう。
剪定した直下の枝がよく育つので下の写真のような場合は切り残した部分に、結果枝や徒長枝が多く発生してしまいます。
それが意図したモノであればいいのですが写真のように明確に残す枝がある場合は、不要な部分は切除しましょう。
この通り綺麗にしておきます。
枝がごちゃごちゃしたところは害虫も発生しやすいです。
樹冠内部は整理・整頓・清潔にしておきましょう。
切り口は綺麗に
剪定するときは極力、鋭利な刃物で枝と切断面が直角になるように切りましょう。
切断面は剪定後、時間をかけて癒合していきます。
この時、枝に対して斜めに切ると断面積が増えて癒合に時間がかかります。
写真の一番下は今年切った枝です。
上は去年切った枝です。癒合しかかってますね。
真ん中の枝は一昨年剪定した枝でしょうか?完全に癒合しています。
たまに聞かれるのですが、個人的には癒合剤は不要と思っています。
そのままでもブルーベリーは腐朽することは少ないですし、数年で主軸枝を更新しますので庭木のように神経質にならなくていいと思います。
もし癒合剤を使われるのであればトップジンMペーストが定番ですが木工用ボンドやペンキ、パテやシリコンシーラントでも特に問題ないようです。
適材適所を心がけて道具を選ぶ
ここまで剪定の知識や技術について書いてきましたがやはりそれを支えるのは良い道具だと思います。
私は剪定するときは常に3つの道具を持ち歩いています。
剪定バサミ大(飛庄 剪定ばさみ 飛竜型 )
シュートやサッカーを切る専用。大柄で力が良く入る。
剪定バサミ小(播州 一刀流 B型剪定鋏 145mm)
小枝や結果枝を切る専用。取り回しがよく樹冠内で作業しやすい。
剪定ノコギリ(Silky POCKET BOY 130)
主軸枝の更新や硬く古い枝を切る専用。
同じシリーズで170や210もありますがブルーベリーの剪定なら130で十分です。
太く硬い枝を小さな剪定ばさみで切るには無理があります。
刃がまがったり、剪定バサミそのものが歪んだりしてしまいます。
逆に、細く柔らかい枝や樹冠内での作業は大柄な剪定バサミや剪定ノコギリでは効率的に作業することができません。
用途や目的にあった道具をこまめに使い分けることが効率的な作業をもたらします。
そして使い終わった後のメンテナンスも大事です。
剪定バサミはヤニを落としましょう。
時には研ぐことも大事です。
私はシーズン毎に研いでいます。
剪定ノコギリも替刃が販売されてますので定期的に交換するようにしましょう。
まとめ
長くなりましたのでまとめておきます。
「剪定の目的をはっきりさせる」
せらす果樹園では
①来年の果実の収量と品質の確保
1.花芽の数で収量と品質のバランスをとる
1.収量の確保(残す花芽を考える)
2.果実品質の確保(花芽の数を制限する)
3.予想収量の検討と実力値の乖離を確認する
②栽培管理しやすい樹形を維持する事
1.管理しやすい樹形作り
1-1.結果枝は外側に
1-2.直下の葉芽(節)の向きに気をつける
2.膝下の結果枝は剪定する(株元を清潔にする)
3.頭上の結果枝は剪定する
4.空間を上手に使った樹形作り
2.来期以降の樹形を考える
1.更新間隔を考える
2.来期以降の結果枝を考えながら剪定する
③その他(他に注意すべきこと)
1.剪定後の無駄な枝は残さない
2.切り口は綺麗に
3.適材適所で道具を使う
という事に気をつけて剪定し、最終的には
・翌年の結果枝(収量)が確保されており
・収穫や管理作業に適した状態で
・来期以降の樹形や更新が考慮されている
という状態にしてあるというわけです。
最後に
いかがでしたか?
今回は未来へつなげる剪定術という事でご紹介しました。
一口に剪定と言ってもなかなか奥深いものでなかなか紹介する機会がなかったのですが、今回記事にできてよかったです。
もちろん、これが剪定の全てではありません。
栽培している品種、風土、目的によって剪定術とは変わってくるものです。
あくまで、「せらす果樹園流」ということで参考にしてもらえればと思います。
以上、長くなってしまいましたが皆様のブルーベリー栽培の一助になれば幸いです。
それでは今日はこの辺で。
バイバイ!
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