秋の夜長でちょっと眠れなくなったので記事を書いてみます(笑)。
ブルーベリーを栽培していると、さまざまな害虫に遭遇します。
当園でもイラガ類やコガネムシ類など、多くの害虫を確認してきましたが、近年とりわけ頭を悩ませているのが「シャシャンボツバメスガ」です。
2026年の当園では、新梢への食害の大部分がこの虫によるものでした。
しかし、長年ブルーベリーを栽培していると、害虫による食害が必ずしも悪いことばかりではないと感じる場面もあります。
今回はシャシャンボツバメスガの生態と当園での防除実績、そして食害によって生じる意外なメリットについて考えてみたいと思います。
シャシャンボツバメスガという害虫
シャシャンボツバメスガ(Saridoscelis sphenias)は、ブルーベリーやシャシャンボなどのツツジ科植物を加害する小型の蛾です。
問題になるのは成虫ではなく幼虫です。孵化した幼虫は新梢の内部に侵入して食害し、その後、成長すると新梢から出て、葉や枝を糸でつづり合わせながら食害することが報告されています。
新梢の先端部分が萎れたり、枯れ込んだりするため、ブルーベリーの樹形形成に大きな影響を与えることがあります。
ところが、この害虫について調べてみると、詳しい生態に関する資料が意外なほど少ないことに気づきます。
例えば、
- 卵から孵化するまで何日かかるのか?
- 幼虫期間はどの程度なのか?
- 年間何世代発生するのか?
といった防除計画に必要な情報が十分に見つかりません。せいぜい春から秋にかけて発生するという曖昧な情報しか見当たりません。
そこで当園では、4月中旬から10月中旬まで約2週間に1回という間隔を防除の目安にしています。起点として利用しているのが月齢です。満月・新月の4~6日後を目安にすれば、おおむね15日間隔で防除の予定を組むことができます。
しかし昆虫の活動と月齢に関連が認められる研究はありますが、シャシャンボツバメスガについて同様の関係が実証されているわけではありません。
あくまで防除時期を考えるための仮説であり、約2週間という間隔が最適だと確認できたわけでもありません。狙いは、卵から孵化した幼虫をできるだけ早い段階で防除することです。
ただし、本種は孵化後に新梢内部へ侵入するため、BT剤がどの発育段階で最も効果を発揮するのかについても、今後検証する必要がありそうです。
ちなみにBT剤の薬効性(残効性)は3日程度だと言われています。そしてエクシレルSEは10日~1か月という長い薬効を発揮します。
2026年の防除実績から考える
当園では2026年の4月中旬~6月上旬にかけて、おおむね2週間間隔でBT剤(この期間はゼンターリとデルフィンを交互に散布)を散布しました。その結果、春の一次伸長枝におけるシャシャンボツバメスガの食害は軽微でした。
さらに6月23日にはエクシレルSEを散布しています。二次伸長枝についても被害は少なく、BT剤による継続的な防除とエクシレルSEの効果が寄与した可能性があります。
ところが、秋になると状況が一変しました。
2026年7月7日~9月3日まで広島県竹原市では極端な少雨が続き、期間中の降水量がわずか16mmでした。雑草ですら弱ってしまうほどの乾燥状態で、ブルーベリーの新梢伸長がほぼ止まっていました。
しかし9月になると定期的な降雨が戻り、月間降水量は223.5mmとなりました。特に9月中旬頃から秋枝が活発に伸長し始めました。そして、この秋枝にシャシャンボツバメスガの食害が多発したのです。
振り返れば、8月20日にBT剤を散布した後、10月6日にエクシレルSEを散布するまで防除を行っていませんでした。8月中は予定もあり、十分な管理ができなかった時期です。
この防除の空白と秋枝の伸長が重なったことが、被害拡大の一因になった可能性があります。
もっとも、春から夏の被害が少なかった理由が農薬の効果だけだったとは断定できません。季節による害虫の発生量の違いも考慮する必要があります。
今回の経験から学んだのは、暦や月齢だけでなく、新梢の伸長状況にも注目すべきだということです。特に乾燥後の降雨によって新梢が再び伸び始める時期は、重点的に観察したいと思います。
食害は本当に悪いことばかりなのか?
さて、ここまでシャシャンボツバメスガを厄介な害虫として紹介してきました。しかし、栽培管理という視点で考えると、必ずしもすべての食害が損失になるとは限りません。
ブルーベリーでは、勢いよく伸びるシュートやサッカーを利用して樹形を更新します。とはいえ、長く伸びれば伸びるほど良いというわけではありません。
当園では収穫作業の効率や果実品質を考え、おおむね腰から目線までの高さに結果枝を配置することを重視しています。
低すぎる位置では泥はねなどによる果実の汚れが心配ですし、高すぎる位置では果実の状態、とりわけ果柄痕を確認しにくくなります。
(剪定による結果枝の配置についてはこちら→ブルーベリー 未来へつなげる基本の剪定術)
また、立派なシュートが1本伸びたからといって、それが必ずしも品質のそろった果実を生産する枝になるとは限りません。そこで、40~50cm程度まで伸びたシュートやサッカーを摘心し、側枝の発生を促すことがあります。
では、その位置をシャシャンボツバメスガに食害されたらどうでしょうか。
結果として、摘心した場合と似た状態になる可能性があります。

頂芽が失われることで側芽が伸長し、樹形形成に利用できるかもしれません。もちろん、人間が行う摘心とは違って、害虫が都合の良い位置を選んでくれるわけではありません。
食害位置が不適切であれば、健全な部分まで切り戻し、外向きの葉芽を残す位置で剪定する必要があります。また、必要な更新枝や結果枝が損傷すれば、翌年以降の収量にも悪影響を及ぼす可能性があります。
ただし、「食害があった方がいいのか?」と言われるとそうでもなくて、「食害自体はない方が好ましい」です。思いがけず摘心のような効果が生まれる場合はあっても、積極的に害虫を利用すべきだという話ではありません。
重要なのは、食害の有無だけでなく、その食害が栽培上どのような影響を与えるのかを判断することです。
冬季剪定で取り除く予定の枝が食害された場合と、翌年の収穫に必要な結果枝が食害された場合では、被害の意味が大きく異なります。
すべての害虫を駆除し、食害をゼロにすることが、必ずしも最良の栽培管理とは限りません。一方、必要な枝を守るためには、適切な時期に農薬を使用することも重要です。
シャシャンボツバメスガは確かに厄介な害虫ですが、その食害を一律に悪とするのではなく、許容できる被害と防ぐべき被害を見極めること。それもまた、ブルーベリー栽培の技術のひとつではないかな、と思う今日この頃です。
それでは今日はこの辺で。バイバイ!
参考:韓国応用昆虫学会誌 2022年報告(DOI: 10.5656/KSAE.2022.11.0.060)






















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