こんにちは、せらすです。 皆様はブルーベリーの成分・機能はご存知でしょうか? 最近ではブルーベリーは健康食品として注目される事が多いですね。 やはり生産者としてはそのあたりをご紹介しないわけにはいきません。 今日はブルーベリーの成分や、巷で有名な「目にいい」という事まで 各種資料のご紹介と、個人的な経験談や考察をまじえてお話していこうと思います。
ブルーベリーの成分と特筆すべきこと
ブルーベリーの成分は下記のようになっています。 転載元ごとにそれぞれ微妙に値が異なっていますが、 おおよその傾向はつかめると思います。
ブルーベリー100g あたりの成分 | 品種 | USDA データベース | |
ジャージー | ティフブルー | ||
エネルギー(kcal) | 52 | 66 | 57 |
水分(g) | 85.5 | 81.6 | 84.21 |
たんぱく質(g) | 0.5 | 0.4 | 0.74 |
脂質(g) | 0.1 | 0.1 | 0.33 |
炭水化物(g) | 13.7 | 17.8 | 14.49 |
灰分(g) | 0.2 | 0.2 | – |
ナトリウム(mg) | 0.7 | 1.0 | 1.0 |
カリウム(mg) | 70.6 | 78.0 | 77.0 |
カルシウム(mg) | 10.2 | 6.3 | 6.0 |
マグネシウム(mg) | 5.8 | 4.5 | 6.0 |
リン(mg) | 9.8 | 7.1 | 12.0 |
鉄(mg) | 0.3 | 0.2 | 0.28 |
亜鉛(mg) | 0.1 | 0.1 | 0.16 |
銅(mg) | 0.04 | 0.04 | – |
マンガン(mg) | 0.49 | 0.05 | 0.336 |
カロテン(μg) | 65 | 15 | 32 |
ビタミンB1(mg) | 0.03 | 0.03 | 0.037 |
ビタミンB2(mg) | 0.03 | 0.05 | 0.041 |
ナイアシン(mg) | 0.2 | 0.3 | 0.418 |
ビタミンB6(mg) | 0.05 | 0.05 | 0.052 |
葉酸(μg) | 2.9 | 2.5 | 6.0 |
パントテン酸(mg) | 0.10 | 0.14 | 0.124 |
ビタミンC(mg) | 8 | 17 | 9.7 |
水溶性食物繊維(g) | 0.6 | 0.4 | – |
不溶性食物繊維(g) | 3.2 | 3.7 | – |
食物繊維総量(g) | 3.8 | 4.1 | 2.4 |
品種のデータはブルーベリー全書(日本ブルーベリー協会編集 創森社)P.337より転載 一番右欄はUSDA(アメリカ農務省)食品データベースの値 Wikipedia ブルーベリー 最終更新 2017年8月17日 (木) 18:55 より転載 この表を見ただけでは何がどうなのかは分かりませんが 特筆すべきは「食物繊維」の多さです。 食物繊維が豊富なフルーツTOP10を調べてみたところ このようになっていました。
干し・乾燥 | 含有量(g) | 生 | 含有量(g) | |
1 | ブルーベリー | 18 | かりん | 9 |
2 | 柿 | 14 | グァバ | 5 |
3 | なつめ | 13 | ラズベリー | 5 |
4 | いちじく | 11 | マルメロ | 5 |
5 | あんず | 10 | アボカド | 5 |
6 | バナナ | 7 | レモン | 5 |
7 | プルーン | 7 | ブルーベリー | 4 |
8 | ぶどう | 4 | キウイ | 3 |
9 | いちご | 3 | 柿 | 3 |
10 | りゅうがん | 3 | 梅 | 3 |
可食部100g中の食物繊維総量 文部科学省食品成分データベース「日本食品標準成分表2015年版(七訂)」より引用 乾燥状態であればブルーベリーはフルーツの中でダントツに食物繊維が多いです。 生食であればブルーベリーは7位まで順位を落としますが、 上位にいる生フルーツは入手できなかったり生食されていないものばかりです。 かりんやマルメロは生食には適しませんし(シロップ漬けや果実酒用)、 アボカドをフルーツとして扱うかは(個人的に)疑問があります。 レモンを可食部100g食べるというのも(酸っぱすぎて)現実的ではないでしょう。 グァバやラズベリーはそもそも生食で流通していません。 つまり、ブルーベリーは現実的に入手可能な食用フルーツとしては最も 食物繊維が豊富なフルーツと言えると思います。 尚、食物繊維がどのように有用なのかはここでは詳しく触れませんが
食物繊維の効用 食物繊維の効用として、脂質異常症予防、便秘予防、肥満予防、糖尿病予防、脂質代謝を調節して動脈硬化の予防、大腸癌の予防、その他腸内細菌によるビタミンB群の合成、食品中の毒性物質の排除促進等が確認された。長寿地区住民の高齢者の食物繊維摂取量と同一人の腸内細菌叢を分析することによって、食物繊維の摂取量が多いと、働き盛りの青壮年なみに有用菌(ビフィズス菌等)が優勢で老人特有の有害菌(ウエルシュ菌等)は抑えこまれていることが実証された。さらにこの有用菌は腸内腐敗防止、免疫強化、腸内感染の防御、腸管運動の促進といった作用のあることがわかった。 Wikipedia 食物繊維 最終更新 2017年3月30日 (木) 14:38 より抜粋
と、あります。 つまり食物繊維の摂取によって
- 脂質異常症
- 便秘
- 肥満
- 糖尿病
- 動脈硬化
これらの予防が図れる共に、
- ビタミンB群の増加
- 毒性物質の除去
- 腸内有用菌の増加
- 有害菌の発生抑制
にも効果があるとの事です。 もちろん健康は食物繊維だけで成り立っているわけではないので過信は禁物ですが これらの効能がある、という事は知っておいて頂ければと思います。 尚、これらのデータ自体の信憑性ですが、 ブルーベリー全書に記載されているジャージー、ティフブルーですが 現時点では古い品種と言わざるを得ません。 昨今もてはやされている大実品種は可食部が多く、 相対的に種・皮は少なくなっています。 よって食物繊維も、表に比べて少なくなっていると思います。 正直これらのデータは調査元・記載元によってブレ幅があるので厳密な比較はできません。 ですが、生食フルーツの中ではブルーベリーが食物繊維を豊富に持っていること、 その量は2~4%である事、と思ってください。
その他の有用な成分
その他の注目されている栄養成分といえば やはり目にいいとされるアントシアニンでしょう。 アントシアニンはポリフェノール類に属する植物成分の一つです。 アントシアニンが豊富に含まれている食品は以下の様なものがあります。
- ビルベリー
- ブルーベリー
- カシス
- 黒豆
- ナス
- ブドウ
- 紫いも
- 紫キャベツ
- 紫たまねぎ
- シソ
基本的にベリー類や青・黒・紫色のものに多く含まれているようです。 ではブルーベリーには、一体どれくらいのアントシアニンが含まれているのでしょうか?
品種 | 含有量(mg) | |
ブルーベリー | 野生種 | 188 |
NHコビル | 100 | |
NHブルークロップ | 83 | |
NHジャージー | 117 | |
REティフブルー | 210 | |
ビルベリー(野生種) | 370 |
100g中のアントシアニン含有量 ブルーベリー全書(日本ブルーベリー協会編集 創森社)P.338より転載 ビルベリーにたくさん含まれている事がわかりますね。 ちなみにサプリで有名な「ブルーベリーアイ」はビルベリーから作られています。 (厳密に言えばビルベリーとブルーベリーは「種」としては同じですが「節」としては異なるグループなのでブルーベリーではありません。 しかし広義では北欧でビルベリーをブルーベリーと呼んでいるらしいので間違いではないようです) 栽培ブルーベリーは概ね100~200mg(100g中)のアントシアニンが含まれている と考えていいと思います。 さて、アントシアニンは目に良いと言われています。 しかしそれだけなのでしょうか? Wikipediaなどを見てみると、アントシアニンには様々な効果があると記載されています。
アントシアニン 健康食品 動物実験では抗酸化性に由来すると考えられる薬理作用が見出され、ヒトでは筋疲労を抑制し、運動による過酸化脂質の増加を抑制したとの実験結果が得られた。 Wikipedia アントシアニン 最終更新 2017年8月8日 (火) 09:31 より抜粋
動物実験からは抗酸化作用が認められ、ヒトにおいては 疲労軽減やコレステロール・中性脂肪の酸化を防止できるとの事です。 まるで魔法のようなアントシアニンですが、 国立健康・栄養研究所のデータベースによれば、 「アントシアニン自体がヒトへの有効性・安全性について、はっきりしたデータがない」 と記載されています。
(参考:国立健康・栄養研究所:アントシアニン ※閲覧にはリンク先で同意が必要です。)
つまり、「ブルーベリーが目に良い」というのは 可能性はあるけども現時点では都市伝説・・・。 ぐらいに思っておいた方がいいのかもしれません。 個人的にも夏の間は毎日ブルーベリーを食べていますが 目が良くなったという実感はありません・・・。 アントシアニンの効能は4~24時間と言われていますので すぐに効果が現れるわけでもなく、効果が長続きするわけでもないので 気が付きにくいのかもしれません。
その他に注目される機能
その他に注目されるブルーベリーの機能としては アントシアニン由来の抗酸化作用が挙げられます。 人間は酸素を吸って生活していますが、その全てがエネルギーの消費に用いられるわけではありません。 消費しきれなかった酸素が、体内でより反応しやすい物資と結びついて化合物を作ることがあります。 それが活性酸素と呼ばれるものです。 (酒・タバコ・ストレス・紫外線なども活性酸素を増加させる原因となります) 活性酸素は1日に10億個程度発生し、体内のDNAを損傷させます。 しかし、ほとんどはすぐに修復されます。 ですがDNAの修復は稀な頻度で失敗するので それが突然変異やガンの原因となります。 そこで重要なのが活性酸素を発生させないこと。つまり抗酸化作用です。 ガンを予防するには生体防御機能群というものがありまして それぞれ段階ごとに役割が変ってきます。
中村仁信、『放射線と発がん』公益財団法人 大阪癌研究会、2011年 Page 2, Chart 1 発がん抑制のための生体防御機構から Wikipedia 抗酸化物質 最終更新 2017年8月25日 (金) 11:33 より転載
つまり抗酸化物質を積極的に摂取することで ガンの元となるDNA損傷を予防できるわけですね。 では、抗酸化作用に優れているというブルーベリーですが 一体どれくらい作用があるのでしょうか? 抗酸化作用にはORAC (食品1gあたりの酸素分子吸収能量:oxygen radical absorption capacity) という表示が用いられています。 これをまとめたのが・・・ ・・・と、表を出したいところなのですが ORACを食品ごとに数字を出していたUSDA(アメリカ農務省)ですが 2012年にORACデータベースを撤回してしまいました。 その理由としては、
Oxygen Radical Absorbance Capacity (ORAC) of Selected Foods, Release 2 (2010) In 2012 USDA’s Nutrient Data Laboratory (NDL) removed the USDA ORAC Database for Selected Foods from the NDL website due to mounting evidence that the values indicating antioxidant capacity have no relevance to the effects of specific bioactive compounds, including polyphenols on human health. United States Department of Agriculture より抜粋 要約:2012年、米国農務省の栄養データ研究所(NDL)は、ポリフェノールを含む特定の物質の抗酸化能を示す値(ORAC値)が人間の健康に関係がないという証拠を元に米国農務省のORACデータベースを削除しました。 ※2018/3/7追記 リンク先が見れなくなりました。ご了承ください。
ここまで書いておいて申し訳ないのですが 抗酸化作用については、はっきりとした効用が分かってないのが現実です。 ORAC値については1988年に発表されたデータでは ダントツでブルーベリーがトップだったのですが いかんせん今となってはデータが古すぎますね。 色々調べてみたのですが2012年以降の信頼できそうなデータはありませんでした。 ですので、抗酸化作用はアントシアニンと同じく効能は研究中であり、 現時点ではガン予防や様々な疾患に「効果がありそう」 という表現にとどめておきたいと思います。
まとめ
結局ブルーベリーの有効成分とは何だったのでしょうか? 農園主をやっていてよく聞かれます。 「ブルーベリーって目にいいんですよね?」と。 確かにアントシアニンは豊富に含まれていますが、 人体への有用な影響は信頼できるデータがありません。 抗酸化作用についてはまだ多くが研究段階のようです。 ですので 「食物繊維が豊富でお通じにいいですよ」と答えています。 それだけは実感としてありますしね。 最後に・・・ 健康はブルーベリーだけでどうにかなるものではありません。 あくまで補助食品として優秀である、という事です。 ブルーベリーにしてもサプリにしても過信せず 健康的な食生活の中に上手に組み込んで頂ければ、と思っています。